12月中旬の夜、外出の帰りにぼくはドーナツ…いや、ドーナッツ屋に訪れていた。
店を出ると、店内との温度差に思わずぶるっと震えてしまう。
昔はこんな寒くなかったんやけどな、と思いながら手に自分の息を吹きかけ温める。息が白く曇り、気温の低さを物語っているのを感じた。
玄関の鍵を置き、走って帰ってきた事で上がった息を落ち着かせるために、ぼくは急いで手を洗いソファに向かった。
リビングから誰かの「ぼくくんおかえり〜!」という声と、夜だから控えめなパイプオルガンの音が聞こえる。
未だによく分からない謎の紫色の生命体は、ぼくの持っている箱を指差して「何それ?」と尋ねているようだった。
一言余計だと言いながらも、箱を開けて3人分のドーナツを皿に分ける。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。