昨晩、
あなたが寝落ちた場に居合わせた俺は
諸々の世話を終えた後、
自室に戻る事にした
しかし、甘い現実は待っていない
どこからかひんやりした空気を感じで
肩を竦ませながら呟く
先に風呂を出た明那は、恐らくもう自室だろう
かといってこのリビングで過ごすのはなんだか癪で
試しに、厚い扉にノックを仕掛けた
こつこつと音が鳴る
果たして向こう側に届いているのかも疑わしい音
しかし暫く後に、目の前の扉の向こうから
重い扉が開く音が響いているのに気がついた
数分後、
あれ以降反応のない扉に背を預けて髪を弄って待機
その状況に、変化は訪れる
軽い音が聞こえた
それは背後の扉からだった
─向こう側で、だれかが扉のロックを解除した音
何故か俺は、冷静だった
俺の思考が、止まったから
次に、一つの疑問が出てきて
混乱が見え隠れする
それに俺は、気が付かない
だから、知らない内に脈が上がっていくのも
背中が冷たく感じるのも
何処かに隠れなければと緊張感を鳥肌にする身体も
全部、気の所為だ
背中から小さく伝わる振動が
向こうに人がいると伝えてくる
その呟きは、思ったより掠れていた
扉の正面に立って
恐る恐る、ドア掟に手をかける
記憶が正しければ押戸なはずなので
ぐっと前に押し込む
重そうな扉は、呆気にとられるほど簡単に開いた
正確には、
向こうが扉を引いたと同時に俺が押したのだろう
紫がかったサラサラな髪が、少し雫を垂らしながら
視界の端で、場違いなほどにきれいに揺れていた












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。