午後。
ヒーロー基礎学。
相澤が低い声で話す。
すると、クラス全員の視線が彼に集まる。
その言葉にクラスがざわめき始める。
……なった、ねぇ。
私はぼんやりと空を見る。
でも一応、念のため。
あなたはスマホを取り出し、悟にメッセージを送る。
送信してスマホをポケットに戻す。
そのとき。
胸の奥に、妙な感覚が走った。
……嫌な予感。
あなたは小さく眉を寄せる。
鬼神丸国重。
相澤が話し終わると同時に、あなたは静かに立ち上がる。
そして一人で更衣室に向かう。
……はずだった。
唐突に名前を呼ばれ、そちらを振り向く。
少し息を弾ませている。
ってことは、慌ててきたのだろうか。
あなたは少し考える。
断りたいが…結局同じ更衣室で着替えるということに変わりはない。
ならば、
三日月のような形に、少しだけ目を細める。
私達は並んで歩き出した。
更衣室へ向かう廊下。
そこで、麗日が声を出す。
あなたは肩をすくめる。
麗日は笑う。
それに倣い、あなたは少しだけ目を細める。
そう思うと、少しだけ胸が温かくなる。
そして更衣室に着く。
扉を開けると、先に来ていた女子たちが着替えている。
入った途端にかけられる言葉に返事はせず、
私は黙ってシャツのボタンを外す。
一つ。
二つ。
三つ。
そしてシャツを脱ぐ。
——その瞬間。
傷だらけの体が顕になった。
背中にある大きな火傷を始めとする、無数の切り傷や打撲痕に火傷、凍傷の痕。
空気が凍った。
視線が痛いほど刺さる。
同情。
疑問。
嫌悪。
沈黙を破ったのは蛙吹梅雨。
あなたは一瞬、彼女の方に視線を向けてすぐに逸らした。
芦戸から放たれた言葉に、八百万は目を見開き止めようとした。
そして、あなたに向き直る。
あなたは目を細めながら、肩をすくめてみせる。
葉隠は瞳に明らかな嫌悪を滲ませながら言う。
すると、麗日が震える唇を開いた。
……やっぱり。
同情。
あなたはゆっくり振り返る。
背中の火傷が、ズキッと痛んだ。
そんな気がした。
あなたは静かに言う。
空気が止まる。
誰も、口を開くことができない。
むしろ悪化していたかも知れない。
そう続ける。
静かな声だった。
あなたはそっと目を伏せる。
彼女の長く、白い睫毛が白い肌に影を作った。
悟は、圧倒的な権力を持っていた。
だから、私を轟じゃなくできた。
でも。
この子たちは違う。
もし連れ出せたとしても、結局連れ戻される。
あの家に。
あなたはコスチュームを着ながら、その言葉に返事をする。
コスチュームの袖に腕を通す。
ボタンを閉める。
ベルトを締める。
髪をまとめる。
更衣室は、静まり返った。
誰も、何も言えなかった。
ただ、あなたの心に静かな闇が広がっていた。
























編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。