第94話

哲也③
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2020/04/27 06:28
そして週末。
お互いの家から中間の距離にあるショッピングモールで待ち合わせて私の車に乗り換えた。
「あまね、会いたかった!」
そう言って強く抱きしめてきた。
私は反応に困った。
「あまね、会ってくれてありがとう。今日も抱かせて。」
そうなるのは、わかってたから頷いた。

ホテルに着くと哲也は止まらない。
ずっと我慢していたかの様に…
そして哲也に抱かれた。

「やっぱり錯覚なんかじゃない!この前も彼女としたけど、こんなに良くなかった!」
『そう。』
私は興味がないから、どうでも良かった。
ソファーに座ってタバコを吸ってると
「あまね、どうしても聞きたい!なんで自殺しちゃいそうなの?なんで出会い系なんてしてるの?それだけは聞きたい。」
話したくないけど、2度と会うこともないなら良いやと思って全て今までの出来事を話した。
「酷い男だなー!でもさ、出会い系で出会って彼女の居る俺が言うのも変だし説得力ないけど聞いてくれる?」
『なに?』
「あまねと会うのは今日で2回目。まだ全然あまねの事、知らないけどさ、絶対性格も良い子だと思うんだ!寂しさから始めた事なんだろうけど。俺、占い師とかじゃないけど絶対幸せになれると思う!だからもう出会い系なんて辞めな!自分大切にしろよ!本当なら俺が全部受け止めるから飛び込んで来い!って言いたいけど俺には彼女と別れる勇気ないんだよ、多分。だからとにかく説得力ないけど自分の事もっと大切にしてほしい!」
私は気が付いたら泣いてた。
なんか糸が切れた様に涙が止まらなくなった。
すると哲也は私を抱き締めて慰めてくれた。
「辛かったよな。苦しかったよな。1人で抱えて頑張ったんだよな。これからは自分の為に生きてほしい。自分の事だけを考えて。自分勝手で良いから。あまねは人に合わせ過ぎちゃうんだよな。」
なんか見透かされた様で
私は声を出して泣いた。
「なぁ、あまね。俺も彼女との事は逃げれない。だから、あまねも逃げないで!」
『うん。』
「もう、あまねとは会わない。俺諦める。だから幸せ絶対掴めよ!」
『うん、ありがとう。』
「最後に1つだけ、お願いがある。」
『なに?』
「最後に、もう1回だけ抱かせて。本気で抱かせて。彼女のつもりで大事に抱くから、あまねも俺を彼氏のつもりで抱かれてほしい。」
『…うん。わかった。』

そして哲也は、また私を抱いた。
途中で何度も何度も言ってくれた。
"あまね、大好き"
"愛してる"
"あまね、かわいい"
哲也は
「嘘でも良いから俺にも言って。」
だから私も、それに答えた。
"哲也好きだよ"
ただそれだけしか言えなかったけど。

そして彼が果てた。

「あまね、ありがとう。最高だった。俺、一生忘れないから!」
『こちらこそ大切に扱ってくれてありがとう。私も忘れないよ。』
そしてホテルを出た。

待ち合わせしていたショッピングモールに着いた。
哲也は、なかなか車から降りようとしなかった。
『降りて。』
「わかってる。あと5分だけ。」
そう言って私を抱き締めて何度も何度もキスをした。
身体中に"しるし"を、たくさん付けた。
『もう帰らないと。』
「うん。キリがないからな。あまね、ありがとう。」
『こちらこそありがとう。哲也元気でね。それと、もう連絡もしないで。』
「うん、わかってる。最後にもう1回だけ言わせて。あまね、マジで自分大事にしろよ!出会い系なんて、もう絶対するなよ!」
『わかった、辞める。哲也、ありがとう。さようなら。』
「幸せになれよ!元気でな!」

そして哲也と別れた。

哲也とは、それっきりになったけど今でも感謝しています。
これを、きっかけに出会い系で見知らぬ男とセックスする事がなくなったから。

哲也…今どうしているか、わからないけど本当にありがとう。

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