第9話

起床
11
2024/06/13 12:13
目が覚める。
変な時間に起きたからか体は怠いけれど、気持ちはすっきりしている。
夢に遙が出て来た事と、遙に呪われたこと。
そして、遙が死んだということだけが、記憶に残っている。
体を起こすと、遙がくれた縫いぐるみが視界に入った。
そうか、もう遙は居ないのか。
そう思うと、大きすぎる淋しさと空虚感が襲う。
今日ずっと、その事実を認識しながら気付かないフリをして来た。本当はずっと気付いていた。最初は頭の奥底の意識で気付いて、どんどん理解していって、それでも言葉にしようとしなかった。
黒月錨
黒月錨
遙....遙.........遙...........
お願いだから早く出て来てくれよ。
もう何でも良い。何で俺を助けてくれなかったんだと、恨み言を吐きに来てくれ。
呪霊になったのなら、それなら、直ぐに出て来てくれ。遙が居ないと厭なんだ。
もう一度寝たら、逢えるだろうか。大好きな遙に、逢えるのだろうか。
約束していた横浜に一緒に行って、2人で笑い合う様な、そんな世界に居られるのだろうか。
その世界が例え、嘘だったとしても。















目が覚める。
あのまま歯も磨かずに寝てしまったのか。
結局のところ、遙は夢に出て来てくれなかった。
出て来るように促せば出て来てくれるだろうか。だって遙は、僕が甘えれば嬉しそうに願いを叶えてくれるし、僕が悪いことをすればちゃんと叱ってくれる人だ。呪霊になったって、それは変わらないだろう。
折角1週間の休暇があるのだから、出て来てくれるように仕向けてみよう。
人ではない遙を迎え入れる準備も、進めなければ。

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