『っ…かえっ』
「俺!…」
いきなり拓哉が口を開いた。
立ち止まって、無言の時間が流れる。
告白してくる!とか言うのかな?
とうとう拓哉にも、彼女できるのかな?
やだなぁ〜、まぁ、何も言わなかった私が悪いんだけどね。笑
でも、…聞きたく、ない……
ぎゅっと目を瞑る。
「おれ…。あなたのこと、すき。」
『えっ』
予想と180°違う答えに、一瞬何が起きたか分からなくなった。
けれど、すぐに言葉が戻ってきた。
え、? 好き? 私を?
頭の中をフル回転させても状況が理解できない。
そんな中に、
ふわっと香る拓哉の匂い。
道の真ん中で抱きしめられている。
「あなた…。、返事、聞かせて?」
返事、返事しようと思っても、言葉が出てこなくて。
「あ、あぁごめん!勝手に抱きしめちゃって、」
『や、別に…』
嫌なんかじゃない。
むしろこのときを望んでいた。
「返事は、いつでも…。待ってるから。」
そっと私から離れて背を向けて拓哉が帰っていく。
だめ、ちがうの…
『まって!』
体が勝手に動いて拓哉の服の袖を掴む。
『あの…』
拓哉が私の顔を覗き込んで、目を合わせてくる。
『わたし、ね。…好き、だよ』
あと…ちょっと……
『拓哉のこと、すきっ』
ぎゅっと握っている手を強くする。
涙が溢れてくる。
「あぁっ、なんで泣くの?」
『嬉しくて…っ』
「じゃあ、、、付き合って、くれる?」
『っ…うんっ!』
出てくる涙を拭って、拓哉に思いっきり抱きつく。
「ぅわっ、!」
『た、たくやっ…ずっと、すきだった。』
「…おれも、何年も前から好きだったよ」
いったん体を離して、見つめ合う。
拓哉の唇がだんだん近くに…
《みて!あのふたりちゅーしてる!!》
かァーっと顔が熱くなってくる。
目の前の拓哉も赤面している。
「行こっか、」
『ぅ、ん』
手を繋いで歩き始める。
やっと幼馴染から昇格して、恋人になれました。
でも、キスできるのはまだまだ先。笑
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!