第68話

67話 1095日
1,304
2023/06/12 08:29 更新
小鳥の囀りが聞こえる
生暖かい風が頬を掠めていく
てると
……
しゆちゃと出会って3度目、4人と出会って2度目の、春が来た。
まひと
あったかー…
ゆきむら
……寝そう
僕等6人は、学校の中庭に背中合わせで座っていた
ぱち、と一つ瞬く

なにか、景色が違う気がする
ばぁう
あ、てるちゃんてるちゃん
隣にいるばぁうくんが前を指さす


その方へ向くと、桜の花びらが風に乗って舞っていた
ばぁう
…てるちゃんの頭
てると
ほんとだ、一緒だね
ばぁう
……わかる?
てるちゃんは八重桜っぽいよね、なんてばぁうくんは笑う
てると
うん。綺麗
桜の木を見てそう言うと、ばぁうくんは驚いた表情で僕を見た
てると
……
てると
あげる
それを見た僕は、落ちていた桜一房をばぁうくんに差し出した
ばぁう
、ぅえ、まじ??
僕が頷くと、ばぁうくんの瞳が輝いた
ばぁう
一生大切にするわ
てると
本当にばぁうくんならしちゃいそうだなあ…
そうま
なになに?俺にもちょーだい?
てると
……
てると
はい、飴のごみ
そうま
ありゃ、
ばぁう
ざまあ
ばぁうくんの隣のそまちゃをあしらい、また桜の方を向くと、ふと肩に重みがかかった
てると
……
しゆん
…俺には?
僕の肩に頭を預けたしゆちゃが僕を見上げる
なんとも言えない気持ちに、思わず空を仰いだ
てると
……、
言葉に詰まる。


あのときのような感じじゃなくて、いたたまれなさがある。
まひと
……番犬が一番要注意人物なのはどうかと思うんだけど
しゆちゃの隣のまひとくんがしゆちゃを引っぺがしてくれて、取り合えず安堵する
しゆん
犬じゃない。騎士だっての
まひと
はいはい。
……でもまあ、てるちゃんはこんな中途半端野郎がいいんだろうね。
まひと
……ずるいや…
しゆん
……


まひと
…はい、というわけで
皆様にご報告があります
しゆん
へ?
そうま
報告?
ゆきむら
……やべ、寝てた…
まひとくんは突然手を合わせて微笑んだ
まひと
…僕ね、
父さんの会社、継ぐことにした
てると
……ぇ、
ばぁう
え?いいのか?
お前…あの親……
そうま
えっ、……
まひと
継ぐよ。
元々その為に生まれてきたし、経済学は得意だしね。まあ…
まひと
お父さんたちに、正面から立ち向かいたいっていう単なる我儘なんだけどね
そう言って頬をかくまひとくん
しゆん
それでいいの…?
まひと
うん。まあひとまず社長候補、ってところだねえ
ゆきむら
……
ゆきむら
僕もがんばろ
そうま
おっ、官僚?
ゆきむら
ん、
ばぁう
かっけーじゃん、力持ちってかんじ
そうま
縁の下って言え、縁の下って
まひと
てるちゃんは?
なんかなりたいのあるの?
てると
僕…?そうだな……
なりた”かった”と一番初めに浮かぶのは、『みんな』。
不特定多数の人間が『普通』と言う『普通の人間』。

そう、なりたかった。
でも……
まひと
……?
てると
……まひとくん、
まひと
え?
てると
…そまちゃ、ばぁうくん、ゆきむ、しゆちゃ
てると
…に、なりたい
そうま
……
いつか、君になりたい、と言ったことがあるだろう。
嫌味しか詰められてないその言葉に、どれだけ自分が呆れたか
てると
……だって


てると
好きなものに、なりたいじゃないか
でも、これは本心だ。


嫌なことなんて、いくらでもあっただろうに、僕を嫌わないでいてくれた。


そんな君たちが好きだ
まひと
……ぼ、くも…
まひと
僕も!!てるちゃんになりたい!
勢いよく手をあげるまひとくん
ばぁう
俺もてるちゃんなる!!君の名は〇やりたい!
ゆきむら
そゆことじゃねえだろ。
ゆきむらもなるわ。てると好きだし
そうま
……そうだな、
…てると”みたいに”なりたいな…
てると
……
思わず微笑する


そうか、そうか…


僕”みたい”に……
しゆん
……
しゆん
俺、てるちゃんになったら死んじゃうかも…
てると
…そ、れは…大変だね…
新しいおもちゃでも見つけたように目を光らせるしゆちゃ
まひと
…守らねば、この狂犬から
ばぁう
激しく同意
ゆきむら
年々ポンコツ度増してきてないか
そうま
大丈夫かあいつ……
まひと
こりゃもうあれだな、騎士の名を強奪する他ないな
ばぁう
ほう。
まひと
騎士が....四人…
騎士4ナイトフォー
まひとくんが拾った枝で地面に文字を書いていく
ばぁう
だっせ
そうま
四銃士だ
ゆきむら
銃は使わねえよ騎士は
しゆん
おい、騎士は俺一人で十分だからな?
まひと
うーん…そうだな…今年も全員A組だったし…
しゆん
聞いてる?ねえ聞いてる?
またまひとくんが枝を地面に滑らせる
まひと
……騎士AナイトA
ばぁう
なんかかっこよくなった
そうま
あー…
ゆきむら
鳥肌が立ちました
しゆん
集団名付けたところでなんも変わらんて、なんで付けた
まひと
ええ?なに?しゆちゃも入りたいの?
しゆん
元々騎士は俺一人なんだけど
ばぁう
えー?どうするー?入れるー?
そうま
えー?どうしよっかあ
しゆん
小学生女子か
ゆきむら
しゆん入れたらどうなんの?しゆんもA組だけど一応
しゆん
…一応?
まひと
えー…しゆちゃ入れたらああなるよ?
まひと
プ〇キュア5になるよ。
しゆん
系統が真逆…
飛び交う言葉に百面相するみんなが面白くて、思わず顔が綻ぶ
てると
ふっ、あははっ!!
嫌だった灰色が、好きな灰色になった。
鬱陶しかった虹色が、僕を照らす光になった。
僕の春に、灰色に、青が差した。
ばぁう
てるちゃん?
まひと
どしたのてるちゃん
そうま
なんか面白かったか?てると
ゆきむら
てると…?
しゆん
てるちゃん大丈夫?
てると
……ふふ、
風が吹いて、思わず瞬きをひとつ。
ゆっくりと開けた瞳に映るのは、僕が見える彩。

ああ、なんて綺麗なんだ、と、目を細めた


てると
……なんでもない!
もう笑って誤魔化さない。


もう一度、瞬きをする。


シャッターを切るように、瞼の裏にこの情景を、焼き付けた












僕の幸せの色は、この5色だ。
______________________________________________

何度生まれ変わっても、また君の星になる


視界は暗く、浅く。
でも、安心するような


心の中です

プリ小説オーディオドラマ