帰路を歩いていると、家の前でチャイムを鳴らそうとしている人を見つけた
思わず立ち止まる
知的に光る黒の瞳がこちらを覗いた
今度は、目を逸らさない
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家の前の壁に並んで寄りかかって話す
ゆきむは空を見上げて話す。
僕もつられて上を見た
灰色が光る。
寒いなあ、なんて手元を摩った
押し黙るゆきむ
『眠い。勉強しよ』
『有意義が1番良い』
あんまり上手くいかなくてさ、とゆきむは笑う
僕もそう思う。
……あぁ、そうだ、そうだよ。
『てるは何になりたい?』
「お姉ちゃんのお嫁さん!」
『お嫁さんかあ…』
『じゃあ、お姉ちゃん、てるのお婿さん
立候補しちゃおうかな』
ゆきむがこくりと頷く
光る。光る。
髪の毛先、瞳、空に伸ばした細い腕。
そこには包帯が掛かっていて
空に伸ばした手を握るゆきむ
驚いた顔の後、ふ、と笑った
わざとらしく上を向く
意外だった。
ゆきむが”誰かのため”と口にするのは。
それだけ、変わったんだ
多分ってなんだ。多分って……
…そんな変わった?
自分の胸を抑える
……変な感じだ。スッキリしたような…
刺さった矢が抜けたような…
吸い込まれそうな黒の瞳が揺れる
前髪で隠れた片目がちら、と見えた
深く息を吸い、口を開いた
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「嫉妬」。そんな二文字が頭に浮かぶ
思わず口元が弧を描いた
ふと、ゆきむが僕の手をとる
なんだ、と思うと突然体が浮いた
ゆきむに持ち上げられた。
僕より低い位置にあるつむじを見つめる
「きゃっ♡」とかさあ、なんて言うゆきむの頭を小突く
拗ねるゆきむに思わず苦笑を零す
微笑むゆきむを上から見つめる
笑みが零れた
僕がぐいーっと仰け反るとゆきむは慌ててふらついた
小指が差し出される
片手で支えられるなんて力持ちだなあなんて思いながら、微笑する
その言葉と同時
細い小指に、自分の小指を絡めた
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でもね、この世界、僕の視界はモノクロの世界で。
そんな中から幸せの色を見つけるなんて無謀な希望を掲げて
笑ってくれよ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。