週が明け、テスト期間が近づくにつれて、校内はどこか落ち着かない空気に包まれていた。
そんな中、休み時間の廊下で女子生徒たちの話している声が、俺の耳に飛び込んできた
ドキン、と心臓が嫌な音を立てた。
胸の奥がぎゅっと締め付けられ、モヤモヤとした感情が渦を巻く。
昼休み。屋上へ続く踊り場で、僕は一人でパンをかじっている小川を見つけた。
いつもの無邪気な笑顔で手を振る小川。
俺はその隣に腰を下ろし、努めて平然を装いながら尋ねた。
小川はパンを口にくわえたまま、ポカンと目を丸くした。
問い詰めるような俺のトーンに気づいたのか、小川はパンを口から離し、少し不思議そうに俺を見つめた。
その言葉を聞き、ホッと胸を撫で下ろす自分がいた。
だが、次の瞬間、小川がぽつりと呟いた言葉に、俺は呼吸を忘れることになる。
思わず聞き返すと、小川ははっとしたように口を押さえ、顔を真っ赤にした。
慌てて手をブンブンと振る小川。
だけど、赤くなった耳たぶと照れくさそうに泳ぐ視線が、嘘をつけない性格を物語っていた。
その人が誰なのかを想像しただけで、胸が痛くなる。
このモヤモヤの正体を、もう俺は気づいていた。
俺は一一目の前にいる「男の娘」の小川薫を、友達としてではなく、一人の「異性」として強く意識し、恋をしている。
自分の恋心をはっきりと自覚した瞬間、隣で慌てる薫の姿が、眩しくて直視できなくなっていた。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!