第9話

アクシデント
8
2026/08/31 01:02 更新
自覚してしまった感情は、もう誤魔化しが効かなかった。

薫の顔を見るたびに胸がうるさく鳴り、まともに目を合わせることすらできない。
霧島縁
霧島縁
(好きだなんて.....言えるわけないだろ)
男同士として学園生活を送っている薫に、そんな気持ちをぶつけたら、今の関係すら壊れてしまう。

俺は湧き上がる想いを必死に押し殺しながら、放課後の校舎を歩いていた。
小川薫
小川薫
縁くーん!待ってよー!
背後から聞き馴染んだ声が響き、パタパタと走り寄ってくる足音が聞こえる。

振り返ると、薫が大きな資料の束を抱えて、階段を駆け下りてくるところだった。
霧島縁
霧島縁
小川、危ないから走るなーー
俺が注意しようとした、まさにその時だった。
小川薫
小川薫
わっ......!?
足を踏み外した薫の身体が、宙に浮く。

重力に引かれ、階段の上から真っ直ぐ俺に向かって落ちてくる。
霧島縁
霧島縁
小川!
考えるより先に、身体が動いていた。

俺は両手を広げ、倒れ込んでくる薫の身体を正面から強く抱きとめた。
ドスン、と激しい衝撃が胸に走る。

二人分の体重を受け止め、俺は背中を壁に打ち付けた。
霧島縁
霧島縁
痛っ......!大丈夫か、小川......?
俺の腕の中に収まった薫は、小さく縮こまったまま身動き一つしない。

安堵の息を漏らそうとした瞬間、手に伝わる感触に、俺の思考が完全にフリーズした。
霧島縁
霧島縁
(っ......!?)
呆然としていると、腕の中で薫の身体が跳ねるように強張った
小川薫
小川薫
……っ
ゆっくりと顔を上げた薫の顔は、耳の先まで真っ赤に染まっていた。

大きな瞳には涙が浮かび、キュッと結ばれた薄い唇が細かく震えている。
小川薫
小川薫
.....バカ、離してよ
蚊の鳴くような、消え入りそうな声。
俺の心臓が、今までで一番激しく暴れ出す。
霧島縁
霧島縁
小川.....お前.....
問いかけようとした俺の手を振り払うようにして、薫は僕の腕から飛び出すと、落ちた資料もそのままに、逃げるように階段を駆け下りていった。

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