第5話

🤍 部下5
158
2026/05/02 03:56 更新
その日は朝からバタバタしていた。

年末前で仕事が立て込んでいて、気づけば定時を過ぎても席を立つ人は少ない。
普段よりもオフィスの明かりが長く残っていて、どこか落ち着かない雰囲気が続いていた。

一通りの作業を片付けたつもりでも、細かい修正や確認が積み重なって、なかなか区切りがつかない。
時計を見るとすっかり夜になっていた。
柔太朗
まだですかー?
あなた
あとちょっと
柔太朗
それさっきから5回くらい聞きました
あなた
うるさいなー
軽く返しながらも、キーボードを打つ手は止めない。
やっとのことで最後のファイルを保存した。
あなた
終わった〜
柔太朗
お疲れ様です
山中くんは一度だけ頷いてから、席を立って、

そのままデスクの横にある小さな冷蔵庫の前まで行って、扉を開けて、

何してるんだろうなんて思って見ていると、箱を一つ取り出して戻ってきた。
あなた
....なにそれ
柔太朗
今日クリスマスじゃないですか
あなた
用意してたの?
柔太朗
はい
中には、二人分くらいの小さなケーキが入っていた。
あなた
え、これ食べていいの?
柔太朗
もちろん、一緒に食べるために買ってきたんで
あなた
....ありがとう
そう言いながら、コンビニの袋からフォークを取り出した。
椅子を少し寄せて、一つのデスクを挟む。
あなた
いただきます
口に入れた瞬間、スポンジ生地がふんわりととろけて甘さが広がった。
思ったよりもちゃんと美味しい。
あなた
美味しい
柔太朗
よかった
そのまま何口か食べ進めていると、
あなた
....なに
柔太朗
いやー、
山中くんは少しだけ視線を逸らして、フォークを持ち直して、
そのあと、もう一口すくった。
柔太朗
はい、あーん
あなた
え?
柔太朗
一口どうぞ
あなた
いやいや自分で食べるって
軽く押しつけられて、差し出されたフォークに口を近づける。

結局、観念したみたいに口を開けると、山中くんはほんの少しだけ笑って、ゆっくりとフォークを差し出した。
あなた
...なにこれ
柔太朗
クリスマスっぽくないですか?
あなた
じゃあ、はいどうぞ
今度は自分が同じように差し出したら、
山中くんは一瞬だけ驚いた顔をして受け取った。
柔太朗
...ありがとうございます
あなた
クリスマスに残業ってどうなん?
柔太朗
どうなんですかね
あなた
帰りたかった
柔太朗
俺も







柔太朗
でも
柔太朗
今日じゃなきゃ多分言わないと思うんですけど
あなた
なに






柔太朗
あなたの名字さんのこと、好きです

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