カフェで純喜と二人で話す。
メンバーの可能性があるのもわかってる。
でも、そんなの考えたくなくて、気づいたら頬を涙が伝っていた。
家の中の俺を撮っているカメラは見つからない。
わからないのがとにかく怖かった。
純喜が隣に来て背中をさすってくれる。
もちろん純喜にはいっぱい感謝している。
めんどくさがらずに、俺のためって言っていろんなことをしてくれる。
毎日不安に怯えているけど、純喜のおかげで大丈夫、なんとかなるって思えてきた。
メンバーくらい俺に近い人じゃないと、こんなことできない。
スケジュールと帰り道を把握できるなんて。
メンバーだったとき、それを目の当たりにするのが怖くて、一歩踏み込むことができなかった。
あまり長居するのはよくないから、早めに切り上げて店を出た。
手をぐっと握り合って、俺はしくしく泣きながら歩く。
寂しくて、怖くて、不安で、薄暗い道は妙に虚しい。
不意に聞こえた足音。
反射的に振り返ってしまった。
いつもと時間ぎ全然違うのに、なぜかいるスーツの女の人。
心臓が嫌な音を立てて、冷や汗がじわりと滲む。
嘘だ。
あの人が、なんでここに……?
びくびくしていたら、不意に右手首を掴まれた。
ついさっきまで少し遠くにいたのに、そんなすぐ追いつくの……?
いや、今はメンバー全員がオフの状態。
誰がここにいてもおかしくはない。
立ち止まってしまった俺。
先に俺の手首を掴む人の顔を確認した純喜が息を呑む。
だめだ。怖い。
振り向けない……っ!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。