第5話

蝶屋敷
807
2024/07/17 09:05
<胡蝶side>
蝶屋敷に、冨岡さんが運ばれてきた。
鬼との戦いで重傷を負ったらしい。
鬼自体は強くなかったが、人を庇わなければいけなかったため、動きが鈍くなってしまったそうだ。
怪我を見ると、腕が千切れそうになっていた。
かなりの痛みだっただろう。
慌てて傷を縫い、輸血する。
冨岡さんは傷が残りづらい体質だし、綺麗に縫えたので、傷は残らないと思う。
冨岡義勇
ん……。
寝台に横たわらせてしばらくすると、冨岡さんが目を覚ました。
胡蝶しのぶ
おはようございます。
冨岡義勇
胡蝶……?
意識が戻ったようだったので、私は冨岡さんが今置かれている状況について話し始めた。
胡蝶しのぶ
冨岡さん、怪我を負って任務後に倒れられたのは覚えていらっしゃいますか?あの後、隠の方々がここまで運んできてくれたのですよ。炭治郎くんの応急処置がなければ、今頃どうなっていたか……。聞いていますか?
冨岡義勇
ああ。
私の話が説教じみてきたからか、冨岡さんは暇そうに、斬られた方の腕に力を入れたり抜いたりしている。
思うように力が入らないのか、微かに表情を歪めた。
それを無視して、私は説教を続ける。
胡蝶しのぶ
もう、何回目ですか?
酷い痛みを感じたら、無理せず他の隊士に頼ってください、と何度言ったらわかるんでしょう。
実は、冨岡さんがこうやって運ばれてきたのは今回が初めてではないのだ。
もう数十回、こうやって酷い怪我を負っては失血で倒れ、蝶屋敷に運ばれている。
それこそ、カナエ姉さんが生きていたときから……。
胡蝶しのぶ
とりあえず、しばらくは安静にしていてください。次の柱合会議も休んでくださいね。お館様には私から言っておきますので。
はぁ、と、わざと聞こえるように大きなため息を吐いてみせた。
それらの私の態度が気に食わなかったのか、冨岡さんは眉をひそめ、少し怒ったような声を出した。
冨岡義勇
胡蝶。
自分は任務を遂行しただけなのに、こんなふうに一方的に説教されてはイラつくのはみんな一緒だ。
無表情鉄仮面と名高い鬼殺隊水柱も、やはりそうだった。
だから私は、あえて今までの態度を崩さないまま、それに答えようとした。
胡蝶しのぶ
何ですか?文句があるなら_____。
私の言葉を遮るようにして冨岡さんが口を開いた。
冨岡義勇
"痛い"って何だ?
やや怒り気味に言った冨岡さんの言葉は、たった一言だった。
でもそれは、その場を凍らせるには十分すぎる一言だった。
短くてすみません!

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