第3話

任務 《弐》
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2024/07/12 09:27
<善逸side>
炭治郎と、水柱の冨岡さんと一緒に任務に行くことになった。
正直、柱の人と一緒の任務には嫌な思い出しかないから、憂鬱だ。
でも今のところ、冨岡さんは宇随さんや煉獄さんよりも喋らないし、それに伴って変なことも言わない。
淡々と任務の内容を説明して、今は目的の山まで無言で歩いている。
それにしても、長い!
山までの道のりが、すっごい長いの!!
任務を遂行する前に足が潰れちゃうよ!いいの!?
俺もう帰りたい……!
竈門炭治郎
善逸、大丈夫か?
一番後ろでクネクネしていたからか、炭治郎が振り返って心配そうに聞いた。
それを聞いて、冨岡さんも足を止める。
我妻善逸
え、あ、いや、大丈夫。
無意識にクネクネしていたので、俺は申し訳なく思いながら返事をした。
そんな俺を見て、冨岡さんは口を開いた。
冨岡義勇
少し休むか。
そう言って冨岡さんは、辺りの座れそうなところを探し、指差した。
疲れているのを悟られたのだろうか。
なんて、優しい人なんだろう。
休んだらその分、任務を遂行するのが遅くなるのに。
我妻善逸
ありがとうございます……。
そうお礼を言って、俺は冨岡さんのお言葉に甘えることにした。
<炭治郎side>
それから俺達は、少し休んだ後、目的地の山へ向かい、今はその山頂にいる。
この山に来て思ったことは、「生き物の匂いがしない」ということだ。
普通なら、鳥や虫のような小さな生き物の匂いで溢れているのに、この山はそれが全くない。
それだかではなく、木の幹にも、たくさんの爪痕があった。
竈門炭治郎
義勇さん。
冨岡義勇
ああ。
やっぱり、義勇さんも気づいていたようだった。
善逸は、耳を押さえて顔をしかめている。
不意に、すらりと義勇さんが青い刀身の刀を抜き、構えた。
それと同時に、鬼の匂いが、俺の鼻孔を突いた。
善逸が、恐怖でガタガタと震えだす。
俺は、漆黒の刀身を抜き、辺りを警戒しながら構える。
不意に、鬼の匂いが近くなった。
俺は、そこへ一気に斬り込もうと足に力を入れる。
冨岡義勇
炭治郎!やめろ!
俺が斬り込む前に、義勇さんの静止がかかった。
ビックリして、動きを止める。
ウヘヘヘ、よく気づいたなァ。
鬼は、人間を盾にしていた。
この鬼自体は弱くない。
だが、頭が回る。
この鬼は、人間を盾にしている間は、俺達は攻撃できないことを知っている。
だから、人間を盾にするんだ。
盾にされている男性は、胸元に指を埋められ、叫ばないように口を押さえられている。
だが意識はあるようで、真っ青になってこちらに助けを求めるような視線を向けている。
我妻善逸
え?これどうするの、どうするの!?
善逸があわあわと俺と義勇さんを交互に見る。
義勇さんは、何かを決意したように刀の柄を握り直し、地面を蹴った。
っ!!
あまりの速さに、鬼が反応し切れていない。
義勇さんは、鬼の両腕を斬り落とし、男性を助けてこちらに戻ってきた。
直後。
義勇さんの右腕から、大量の血が噴き出した。
冨岡義勇
っ!!
竈門炭治郎
義勇さん!!
俺と善逸は、思わず顔を真っ青にした。
視界の端に、鬼がニヤリと口角を上げたのが映った。

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