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その日は、ただの仕事終わりのはずだった。
謙杜はキャップを深めに被り、スタッフに手を振って建物を出た。夜風は少し冷たくて、肩にかけたバッグを持ち直す。いつもなら何も考えずに歩く道なのに、その日は違った。
少し後ろ。
一定の距離。
止まると、止まる。
確信まではいかない。でも、何度か同じ違和感を感じていたせいで、胸の奥がざわついた。
「……気のせい、やんな」
小さく呟いて歩き出す。スマホを見るふりをして、ガラスに映る後ろを確認するが、はっきりとは分からない。結局そのまま駅まで行き、何事もなかったように帰った。
その夜、グループのLINEはいつも通りだった。
今日の番組の話、誰が一番ボケてたか、どうでもいいスタンプ。
謙杜も普通に返していたが、画面を閉じたあと、少しだけ息を吐いた。
翌日。
駿佑は、すぐに気づいた。
楽屋で隣に座る謙杜が、やけに落ち着かない。いつもなら近い距離でちょっかいをかけてくるのに、その日は無意識にドアの方を気にしている。
「謙杜、どしたん」
「え? なんもないで」
笑い方はいつも通り。でも、駿佑は見逃さなかった。声がほんの少しだけ硬い。
そこに恭平が割って入る。
「なんか今日、空気重ない?」
「恭平が静かやからちゃう?」
「それは失礼やろ」
軽口を叩き合いながらも、恭平の視線は謙杜から離れなかった。
収録が終わり、外に出る準備をしているとき、謙杜がぽつりと言った。
「……最近さ、帰り道で誰かおる気するねん」
一瞬で、二人の空気が変わった。
「一人で帰ってたん?」
「迎え呼んだりは?」
矢継ぎ早の問いに、謙杜は肩をすくめる。
「大丈夫やって。まだ、なんもされてへんし」
その「まだ」が、二人には引っかかった。
その日の帰り道。
三人は一緒だった。
駅までの道、駿佑は自然に謙杜の隣に立ち、恭平は少し後ろを歩く。何気ない配置。でも、完全に意識していた。
そして、角を曲がったときだった。
人影が、立ち止まった。
謙杜の足が止まるより早く、恭平が前に出た。
「……なに見てるん」
低く、はっきりした声。
相手は一瞬固まり、視線を逸らして足早に去っていった。
駿佑は無言で謙杜の手首を掴み、自分の後ろに引き寄せる。
「大丈夫?」
謙杜は少し遅れて、こくりと頷いた。
そのあと、三人はスタッフに連絡し、事務所でもきちんと対応が取られた。恭平は最後まで落ち着いて状況を説明し、駿佑は謙杜のそばから一歩も離れなかった。
全部終わって、ようやく一息つけた夜。
楽屋に残った三人は、ソファに並んで座っていた。
「怖かったら、ちゃんと言えや」
「言われへんかったんちゃう」
謙杜は膝の上で手を組み、小さく笑った。
「……弱いって思われるん嫌やった」
その言葉に、二人は同時にため息をついた。
「何言うてんねん」
「守る側にとっては、言ってくれた方がええ」
駿佑は少し照れたように続ける。
「俺、彼氏やし」
謙杜は一瞬固まってから、吹き出した。
「急に言うやん」
「事実やろ」
恭平はその様子を見て、肩をすくめた。
「ほんま、手かかるやつやな」
でもその声は、どこまでも優しかった。
帰り道。
今度は三人一緒に、いつもの場所まで。
謙杜は、もう後ろを振り返らなかった。
前には、当たり前みたいに並ぶ背中があったから。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。