第73話

♡.73 -finale-
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2026/03/17 22:00 更新







空はどこまでも高く、雲一つない青だった。









数年前、あのマンションのベランダで始まった恋は、満開の桜に祝福されるなか、人生で最も美しい一日を迎えた。













教会の扉が開いた瞬間、パイプオルガンの重厚な調べと共に、春の柔らかな光がドレスを白く染め上げる。隣を歩く父の腕は少しだけ震えていて、その緊張が私にも伝わってきた。














バージンロードの先、祭壇の前には、白いタキシードを纏った雲雀くんが立っていた。











いつもステージに立つ時の彼とは違う、どこか凛とした、けれど今にも泣き出しそうな顔。
彼は私が一歩ずつ近づくのを、瞬きさえ惜しむように真っ直ぐに見つめていた。











祭壇の前まで辿り着くと、父が足を止めた。
父は私の手を一度だけ強く握り、それをゆっくりと雲雀くんの手へと重ねる。












雲雀くん。……娘を、頼むぞ









短く、けれど祈るような重みのある一言。
雲雀くんは背筋を正し、父の目を真っ直ぐに見返して深く頷いた。












wtri
はい。必ず、幸せにします










その力強い返信に、父は一瞬だけ目元を緩め、私の肩を優しく叩いてから席へと戻っていった。
父の手の熱さが、雲雀くんの手を通じて私の心まで溶かしていくようだった。






















披露宴は、二人の希望で親しい人たちだけを招いた穏やかなものだった。
高砂に座る私たちの元へ、ロレさん、イブさん、不破さんの3人がグラスを手に歩み寄ってくる。











ibrhm
ひば、一旦カッコつけすぎか??
……でも、いい式だな










イブラヒムさんが少し照れくさそうに笑いながら、雲雀くんの肩を叩く。












fw
あのうじうじ悩んでた頃のひばを思うと、本当に感慨深いね。
俺らの中でひばが一番に家庭持つなんてなぁ
lrn
あなた さんも、今日は一段と綺麗だね。
2人とも、改めておめでとう









不破さんもローレンさんも、穏やかな表情でこれまでの月日を懐かしむように目を細めた。












wtri
ロレさん、イブさん、わっちさんも……。本当にありがとうございました。
wtri
先輩方がいなかったら、きっと俺、今ここに立ってないかもしれないんで









雲雀くんがそう答えると、ロレさんは「……おー、それは重いわ」と茶化しながらも、嬉しそうにグラスを合わせた。












特別な余興も、派手な演出も用意しなかった。


ただ、大切な人たちの笑い声が心地よく響き、美味しい料理と穏やかな時間が流れていく。






親族席では、退院してこの日を迎えられた母の元気な姿を、父が隣で支えている。その光景を見ることができたのも、あの日、雲雀くんが迷わずに私を実家へ送り出してくれたからだ。



















中盤、お色直しのために中座する際、雲雀くんがそっと私の手を取った。
会場を少し離れた廊下、窓からは出会ったあの日と同じ春の風が吹き込んでいた。








wtri
あのさ……、









彼はふと足を止めて、私の左手薬指のリングを愛おしそうになぞった。その瞳には、プロポーズをしてくれたあの日と同じ、真っ直ぐな誠実さが宿っていた。













wtri
俺、人前で立派なスピーチとかはできないけど…。
あの時、あのベランダで隣で話してたのがあなたで、本当によかった。
wtri
それだけは、一生言い続けるわ









場所も、苗字も、これから歩む景色も変わっていく。
けれど、隣にいる彼の存在が、私の心の止まり木であることに変わりはなかった。













wtri
これからもずっと、俺の隣で笑ってて









彼は耳元で、私だけに届く小さな声で囁いた。






誰のためでもない、私だけのために向けられた、彼の一番優しい声。













拍手の渦へと戻るなか、私たちは視線を交わし、どちらからともなく笑みをこぼした。


















偶然隣り合わせただけの二人。





ベランダから始まった恋は、今、家族や友人の温かな愛という光を浴びて、永遠の約束へと変わった。



取り繕うことのない、ただの「隣人」だった頃から見せていた素顔。そのすべてが重なり、混ざり合って、ようやく見つけた私たちの色。


それは、世界中の誰にも真似できない、不器用で、けれど眩しいほど純粋な、唯一無二となった。







私たちの物語は、ここからまた新しい日常という、鮮やかな色を刻み始めるのだ。


春の風に乗せて、どこまでも高く、穏やかに。









wtri
愛してるよ、あなた。













ー 𝑒𝑛𝑑 ー

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