第15話

#第十三話 選ばれなかった記憶
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2026/01/10 03:00 更新
午後の廊下は、少しだけ騒がしかった。
偵察部隊に、次の任務の通達が入ったらしい。

隊員たちが集まり、必要な者が呼ばれていく。

「……第一班、前に」

名前が挙がるたび、空気が切り替わる。

ユイは、壁際に立ってその様子を見ていた。
胸の奥が、わずかにざわつく。

――呼ばれなかった。
――必要じゃない?

そんな考えが、勝手に浮かぶ。

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「今回は、短時間の確認任務だ」

真澄隊長の声。

「経験者中心で行く」

理由は、はっきりしている。
合理的で、正しい判断。

それでも。

赤い光が、ほんの少し揺れた。

(……やっぱり……)

役目がない=いらない。
過去の刷り込みが、静かに顔を出す。

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並木度 馨は、ユイの様子に気づいていた。
だが、すぐには声をかけない。

代わりに、少しだけ立ち位置を変える。
ユイの視界に入る場所。

「……今回は、見送りだ」

あくまで事実として。

「次がある」

言い切らない。
保証もしない。

それが、逆に嘘じゃないと分かる。

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任務隊が出発したあと。
施設は、急に静かになった。

ユイは、ぽつりと呟く。

「……わたし……選ばれてない……」

誰に聞かせるでもない声。

真澄隊長は、少し距離を保ったまま答えた。

「今日は、選ばないと決めただけだ」

「選ばない=不要、ではない」

簡単な式のような言い方。

でも、ユイの胸には、すぐには落ちてこない。

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一人になった訓練場。
ユイは、手のひらを見る。

赤い光は、弱く、形を保てずに揺れている。

「……また……」

昔と、同じ。

役目がないとき。
命令がないとき。

「……いらない……」

そう言いかけて、言葉が止まった。

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その瞬間。

「……違う」

並木度 馨の声。

近すぎない距離。
でも、逃げ道を塞がない位置。

「選ばれなかったのは、使われなかっただけだ」

「捨てられたわけじゃない」

はっきりした区別。

ユイは、ゆっくりと顔を上げた。

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「……難しいです……」

正直な言葉。

馨は、少しだけ表情を緩める。

「……そうだな」

否定しない。

「だから、すぐ分からなくていい」

その言葉で、赤い光が完全には消えなかった。

弱いけれど、残っている。

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夕方。
任務隊が戻ってくる。

誰も、ユイを責めない。
忘れてもいない。

ただ、そこにいる。

「……帰ってきた……」

その事実が、少しだけ安心だった。

ユイは、自分の胸に手を当てる。

選ばれなかった記憶は、まだ痛い。
でも――

今は、それだけで終わらない。
次回
第十四話 呼ばれた名前
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