午後の廊下は、少しだけ騒がしかった。
偵察部隊に、次の任務の通達が入ったらしい。
隊員たちが集まり、必要な者が呼ばれていく。
「……第一班、前に」
名前が挙がるたび、空気が切り替わる。
ユイは、壁際に立ってその様子を見ていた。
胸の奥が、わずかにざわつく。
――呼ばれなかった。
――必要じゃない?
そんな考えが、勝手に浮かぶ。
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「今回は、短時間の確認任務だ」
真澄隊長の声。
「経験者中心で行く」
理由は、はっきりしている。
合理的で、正しい判断。
それでも。
赤い光が、ほんの少し揺れた。
(……やっぱり……)
役目がない=いらない。
過去の刷り込みが、静かに顔を出す。
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並木度 馨は、ユイの様子に気づいていた。
だが、すぐには声をかけない。
代わりに、少しだけ立ち位置を変える。
ユイの視界に入る場所。
「……今回は、見送りだ」
あくまで事実として。
「次がある」
言い切らない。
保証もしない。
それが、逆に嘘じゃないと分かる。
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任務隊が出発したあと。
施設は、急に静かになった。
ユイは、ぽつりと呟く。
「……わたし……選ばれてない……」
誰に聞かせるでもない声。
真澄隊長は、少し距離を保ったまま答えた。
「今日は、選ばないと決めただけだ」
「選ばない=不要、ではない」
簡単な式のような言い方。
でも、ユイの胸には、すぐには落ちてこない。
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一人になった訓練場。
ユイは、手のひらを見る。
赤い光は、弱く、形を保てずに揺れている。
「……また……」
昔と、同じ。
役目がないとき。
命令がないとき。
「……いらない……」
そう言いかけて、言葉が止まった。
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その瞬間。
「……違う」
並木度 馨の声。
近すぎない距離。
でも、逃げ道を塞がない位置。
「選ばれなかったのは、使われなかっただけだ」
「捨てられたわけじゃない」
はっきりした区別。
ユイは、ゆっくりと顔を上げた。
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「……難しいです……」
正直な言葉。
馨は、少しだけ表情を緩める。
「……そうだな」
否定しない。
「だから、すぐ分からなくていい」
その言葉で、赤い光が完全には消えなかった。
弱いけれど、残っている。
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夕方。
任務隊が戻ってくる。
誰も、ユイを責めない。
忘れてもいない。
ただ、そこにいる。
「……帰ってきた……」
その事実が、少しだけ安心だった。
ユイは、自分の胸に手を当てる。
選ばれなかった記憶は、まだ痛い。
でも――
今は、それだけで終わらない。
次回
第十四話 呼ばれた名前
すみません、アンケートを取ります
今後の話に関わってくるかもです
よろしくお願いします
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。