~二口side~
あー、俺ホントサイアクだ。幼なじみを酷い言葉で傷つけて泣かせた。
アイツがマネージャーやってたなんて知らなかった。聞いてなかった。その驚きと嫉妬がこんな形で現れた。
先生の話か終わり、みんながそれぞれ帰路につきはじめる。
俺も帰ろうとバス停に向かうと後ろから声がした。
『ふたくちーっ!』
振り向くとそこには
「青根、滑津…」
2人が俺の方へ走ってくる。
「二口」
「…なんだよ青根」
「お前は1人で溜め込みすぎだ。」
その言葉に滑津も頷いて
「部活のことだって、なんでも1人でしようとしてさ!なんのためのマネージャーなのよ!なんで副部長がいると思ってるのよ!部活のことだけじゃない、今日だって朝からぼーっとしすぎ!」
まだ何か言いたそげな滑津を青根がなだめる。
「俺達が言いたいのは、二口はもっとわがままになってもいいんじゃないか」
「だって、俺がしなきゃ、俺が我慢しなきゃ…「そーゆーとこだっつってんの!」」
「それ、アンタのいい所でもあるけど悪いところでもあるの。誰が茂庭さんそっくりにしろって言ったの?人に頼ることって、そんなにだめなこと?」
その言葉が驚くほど胸にスッと入ってきた。
そうか、俺はいつの間にか一人で殻にこもりすぎてたのか。
だからこそ、小さいことでイライラしてひとりよがりになってた。
それを気づかせてくれた。
「そうだな。俺やっと分かった気ぃするわ」
2人は顔を見合わせて笑った。
「ありがとな」
そう言い残して俺はバス停に急いだ。
~あなたside~
うぅ、気まずいよぉ。送るって言ってくれた照島さんに手を引かれてバス停まで来たけど、ベンチに座ったまま無言が続く。
「あ、あのぉ照島さん、ここで大丈夫ですよ?送ってくれてありがとうございます。」
照島さんはゆっくり私を見て
「あなたちゃんさ、アイツ、二口のこと好きなの?」
私は答えられずに俯く。
「俺はあなたを泣かせないし、絶対大切にする。だから、アイツじゃなくて俺を選んでよ。」
「え…?選ぶ…って…?」
「まっ、いまはまだ分かんなくていいよー」
そこから2人でたわいない話をしていると
「あなたッ!!」
「え…っ、けんちゃん…?」
けんちゃんがいた。あからさまに照島さんの雰囲気が変わった。
「照島、お前がああ言ってくれなかったら俺まだ気づかないままだった。今度こそ、俺がソイツ守るんで。」
「…そう言って俺が納得するとでも?」
「いいや?思ってねーよ?だから実力行使しようと思ってな。」
いきいきとしたけんちゃんの表情。いつぶりに見ただろ。
のんきにそんなことを思っているとふいに足が地面から離れる。
「うわぁっ」
ちょうど来たバスに乗り込んだ。いや、お姫様抱っこしたままバスとか拷問か。
2人で隣の席に座らされる。
「あのさ、」
けんちゃんが口を開いた。
「今さら何よ。また文句?別にッ…私、どうとも思わないからっ!けんちゃんのことなんか…ッ!?」
最後まで言えなかった。
けんちゃんの唇が私の唇に触れた。
え、え、これってもしかして…いや、もしかしなくても…キス!?
顔が赤くなるのが自分でも分かった。
「自分でも都合のいいことだって分かってる。でも、俺今さらになって気づいたんだ。お前のこと、あなたのことが好きなんだ。」
びっくりするとどうじにあのマネさんの顔が浮かぶ。
「あんなにマネさんと仲良さそうにしてたじゃん!それに昨日だって女の子と電話、してたじゃん…」
泣きそうになりながら言う。
「あー、あれは照島がそっちの3年のマネに構ってほしさに他校のマネにナンパするから気をつけろよって電話しただけだしそもそもアイツ彼氏いるしな。」
「…へ、てことは、全部私の勘違い…?」
「…そうなるな」
うわあああああああああ!!!!
今度は別の意味で顔が赤くなる。
恥ずかしい、手で顔を覆うとけんちゃんがその手をどけて、、
「ってことだから、これ両思いってことでいいよね?」
私はゆっくり頷く、と同時に2回目のキスをした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。