この会話の中での " ゼファー " とは、
ドラケンの愛機 " ZEPHYR 400 " の名前で、
本人曰く日本一らしい。
ドラケンに絶賛片想い中のエマちゃんにとっては、ドラケンを夢中にさせるゼファーは恋敵であり、気に食わない存在でもあるというわけだ。
「えー、何それ。どっちも嫌な選択肢じゃん。」と、唇を尖らして少し不満そうな顔をするエマちゃんに私は「まぁまぁ」と宥める。
首を傾げるエマちゃんを傍らに、
冷蔵庫からお茶の入ったピッチャーを取り出すと、少し傾けて、水筒へとトクトク…と音を立てながら注ぐ。
背中のエプロンのリボンを揺らしながら前のめりになって答えるエマちゃんの反応に、
思わず「ははははっ」と笑ってしまう。
一通り、朝食の準備と出発の準備を終えた私は身支度を更に整えるため、洗面台に向かうことにした。
(…これは次やったら確実に怒られるな…(汗汗))
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『カチッ、ブォォオオオ…』
ドライヤーのスイッチを入れると、軽く濡らした前髪をセンター分けになるように当てる。
それから毛先へと移動し、所々ついた不格好な寝癖をストレートに直した。
次は、と今度はスムーズに前髪をセット出来るようにカールアイロンのスイッチをオンにする。
顔を洗っている間にカールアイロンが使えるように温めておく必要があるからだ。
『クイッ、ジャーーー』
水道のレバーを上げて、水を流す。
今年の夏本番も例年の最高気温を超えていきそうな予感をさせる、今日の早朝の外気。
両手で蛇口から流れる水を受け止めながら、その手桶に静かに溜めていく。
指の隙間からするりと逃げていく形の無い水が冷たくて気持ちよかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。