第24話

Restart(2)
1,240
2021/07/27 00:00
あなた
ドラケンを30日間 毎日4時間ゼファーにとられるか、20日間 毎日6時間ゼファーにとられるか。
佐野 エマ


この会話の中での " ゼファー " とは、

ドラケンの愛機バイク " ZEPHYR 400 " の名前で、

本人曰く日本一らしい。


ドラケンに絶賛片想い中のエマちゃんにとっては、ドラケンを夢中にさせるゼファーは恋敵であり、気に食わない存在でもあるというわけだ。


「えー、何それ。どっちも嫌な選択肢じゃん。」と、唇を尖らして少し不満そうな顔をするエマちゃんに私は「まぁまぁ」と宥める。

佐野 エマ
うーん…強いて言うなら、30日の方?
あなた
あれ?そーなの?
佐野 エマ
うん。
あなた
私だったら絶対後者だなぁ。
佐野 エマ
なんで?


首を傾げるエマちゃんを傍らに、

冷蔵庫からお茶の入ったピッチャーを取り出すと、少し傾けて、水筒へとトクトク…と音を立てながら注ぐ。

あなた
だってさ、お祭りの日も海行く日も絶対4時間取られるんだよ?それで良いの?
佐野 エマ
え!!!!それはやだ!絶対後者!!!
あなた
でしょー?


背中のエプロンのリボンを揺らしながら前のめりになって答えるエマちゃんの反応に、

思わず「ははははっ」と笑ってしまう。


一通り、朝食の準備と出発の準備を終えた私は身支度を更に整えるため、洗面台に向かうことにした。

あなた
水筒、洗ってくれてありがとう。
凄く助かった!
佐野 エマ
いいよー。…あ、
あなた
ん?
佐野 エマ
そーいえば、昨日は疲れてるだろうと思って言わなかったけど、帰宅前に必ず連絡してよねぇ。
夜ご飯の用意出来ないからぁ(ニコォッ)。
あなた
は、ハイ………ゴ、ゴゴゴメンネ…
佐野 エマ
良いよー、許す(ニコォッ)。


(…これは次やったら確実に怒られるな…(汗汗))










『カチッ、ブォォオオオ…』

ドライヤーのスイッチを入れると、軽く濡らした前髪をセンター分けになるように当てる。

それから毛先へと移動し、所々ついた不格好な寝癖をストレートに直した。

あなた
よし。


次は、と今度はスムーズに前髪をセット出来るようにカールアイロンのスイッチをオンにする。

顔を洗っている間にカールアイロンが使えるように温めておく必要があるからだ。


『クイッ、ジャーーー』

水道のレバーを上げて、水を流す。

今年の夏本番も例年の最高気温を超えていきそうな予感をさせる、今日の早朝の外気。

両手で蛇口から流れる水を受け止めながら、その手桶に静かに溜めていく。


指の隙間からするりと逃げていく形の無い水が冷たくて気持ちよかった。


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