第26話

Restart(4)
1,220
2021/07/31 02:17


私のぎこちない返事に、今度は彼が興味の無さそうな返しをする。

佐野 万次郎(マイキー)
ふーん。
あなた
うん。


『スン…』

その瞬間、表情が無の表情へと一変したのが分かった。


(あ、表情がいつも通りになった。)






『ジトーーー…』


そして今度は眠そうな両目を幾度も瞬きさせながら、

何故か私の顔をじっと観察し始める。


あなた
な、何?
佐野 万次郎(マイキー)


私の言葉に対しては反応すらなく、まるで彼の耳に届いているのかさえ分からなかった。




いつにも増して、

万次郎の考えていることが、


(読めなさすぎる…!!!)

あなた
あの、聞いてる?
佐野 万次郎(マイキー)
あなた
マイキーさん?


独特な圧を含んだ雰囲気で距離を詰め続ける万次郎に、

振り返って彼を真正面から向かえてしまった私は静かに後ずさる。


あなた
ま、マイキー…、!


『トンッ、』


私の背中が洗面台の縁にぶつかったと同時に、万次郎の両腕が私の腹部を挟む様に差し込まれる。


『トンッッ、!』


白い洗面台の縁に両手を付いた万次郎は、下から私を凄む。

あなた
っ、
佐野 万次郎(マイキー)
最近さぁ、


突然、グッと顔を近づけて来た万次郎に、

私は為す術なく、見つめられるまま。


彼の視線から逃れる事は出来なかった。



ジトリとした視線が私の肌を突き刺して、みるみるうちに身体は硬直し始めた。


同じ家、同じ洗剤、

同じシャンプー、

同じボディソープ。






違うのは毎朝出掛ける前に付ける、


______香水ぐらい。





使っているものは殆ど変わらないのに。

まだ私も彼も、香水なんてつけてないのに。


あなた
ッ…







どうしてこんなにも、


万次郎の匂いがするんだろう。









『フイッ』


私の鼻頭を擽る彼の匂いに耐えきれなくなって顔を背けたが、

万次郎は表情一つ変えずに私を見続ける。


佐野 万次郎(マイキー)
何でもない、って言葉多くない?
そう感じてるの俺だけ?
あなた
…そう、?
佐野 万次郎(マイキー)
なんかあるでしょ。あなたがそう言う時、絶対に。
あなた
無、いよ…特には。
佐野 万次郎(マイキー)
本当ホント
あなた
………っ、、、近いって!!!!


彼の肩口に手を当てて、そっと後ろへと押した。


暫くは下を向いて、彼の裸足を見ていたが、

佐野 万次郎(マイキー)
あなた


急に静かになった彼が少し心配になって、おずおずと顔を上げる。

見上げた先に居た彼は少しを膨れて、むすっとしていた。


佐野 万次郎(マイキー)
…昨日、あなただって執拗く聞いて来たじゃん。
あなた
うっ…そうだけど、
佐野 万次郎(マイキー)
じゃ、俺にも聞く権利あるよな?
あなた
無い。
佐野 万次郎(マイキー)
なんで!!!
あなた
無いものは無いの!
佐野 万次郎(マイキー)
あなただけズルいじゃん!
あなた
し、知らない!
佐野 万次郎(マイキー)
はぁ?!じゃ、もー良いよ!
俺も今度から何も教えてやんねーから!
あなた
…っ、

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