僕らは野外ライブの出演が決まって
ちょうど今日、リハがある。
あなたの下の名前に突き放されて
もう数週間も経つというのに、
あなたの下の名前とのことが
ずっと頭の中で回っていた。
『 不安 』。
それだけが心の奥底で
楔か何かのように
ずっと結び付けられていて。
ずっと落ち着きがない状態だった。
___そんな中。
楽屋の机に置いたスマホが
絶えず鳴り止まないのだ。
誰からだろう、そう思って見ようとしたその時。
小柄で、仕事に慣れていなさそうな
新人のスタッフさんに声をかけられてしまった。
すっごい緊張してるみたいだし
きっと何かあったのかな?
僕はそう言い、
スマホをマナーモードにして
そのスタッフさんのあとをついて行った。
---------------------‐-------------------‐
スタッフさんが連れてくれたのは
ライブ会場の裏側に位置する倉庫。
人影も少なく、
ただ埃被った用具がちらほら見えるだけ。
そう言いかけた時、
ピリッという音が鳴って
僕の全身は電気のような痛みに包まれる。
僕はその痛みに耐えられなくて
ふらりと倒れてしまう。
微笑するスタッフが持っていたのは
おそらくスタンガン。
声を出すことも出来なくて
僕の意識はそこで途切れてしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。