第20話

暗雲
348
2022/04/18 15:43 更新
今日は彼とデート。
しかも、全人類が1度は憧れる海デート。

まだ海開きには早いから、海まで行って景色だけ見て美味しい物食べて帰ってくるつもりだ。

私もかなり楽しみにしているが彼も相当なようで、今日の朝、みやかわくんからメッセージが届いた。
『先輩ガチで楽しみにしてるw楽しんでーー✌️』
との事。後輩に自慢するほど楽しみにしてくれてると思うとすごく嬉しかった。
あなた
お待たせ!!
シルク
おお!今来たとこ!
あなた
ごめんねぇ
行こっか!
シルク
おう!
海に到着すると潮の匂いが風に乗って香ってきた。海だなぁと思わせる匂いにしばらく2人で浸っていると、彼が突然口を開いた。
シルク
もっと...こっち来て?
改めて見ると無意識に空けていた私と彼の間のスペースは、客観的に見ると結構な距離だった。
あなた
あ!ごめんね(*^^*)
いっその事思いっきり近づいてしまえと思った私は肩と肩が触れ合うくらいまで体を寄せて、彼に体重をかける。
シルク
っ、、どうしたの?
いつもこんなに近寄ってこないのに
あなた
別に、、いいじゃん
シルク
...いつからそんなに可愛くなったの?
なんかもう絶対離したくない。
あなた
んふふ、離されたくないよ
お互い照れくさくてそれ以上話せなかったが、彼が私の肩に回した手は大きくてゴツゴツした手で、私が一番好きな手だった。

男子高校生にしては小さい、でも大きい体で、いつも私を包んでくれる。こんな日々が一生続けばいいのにって何回思ったか分からない。


その後はある美味しいお店に行ってご飯を食べて、近くのショッピングモールでお買い物をして、帰ることになった。おそろいのネックレスを光らせて、おそろいのパーカーなんて買ってみて。こんなに楽しいお出かけはいつぶりだろう。

一日中遊んで、そろそろ帰るのにはいい時間。一緒に電車に乗って隣に座って、彼の肩にもたれ掛かる。寝るつもりは全く無かったのだが、いつの間にか重くなった瞼が閉じられていて、薄い意識の中で頭を撫でてくれる手が心地よかった。
シルク
送るよ?
あなた
いいよ、ここで
また遊ぼうね(*^^*)
彼の最寄り駅でお別れした。

私の最寄りはここからまた2駅ほど
行ったところにある。

彼と別れて、完全に1人。イヤホンを取り出して、
プレイリストを開いた瞬間だった。





ドンッ...
駅構内の階段上。



自分のものなのか分からないほどに短い悲鳴を合図に、景色が目まぐるしく回り始め、全身が痛む。後頭部に強い痛みが走り、止まった景色の回転。辺りに漂うのは、鉄棒の匂い。目の端には赤く染った黄色いはずの点字ブロック。

薄れていく意識の中、階段の最上階で仁王立ちする人間が見えた。少し微笑んだそいつはジャージを翻して去っていった。

背中に残ったのはどこかで感じたようなヒリヒリした痛みだけ。


またまた近くにいた人が私に駆け寄り頭に触れたところで記憶が途切れた。

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