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第31話

アフターストーリー 思い出の食事
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2025/03/28 11:46 更新
最終選考前に、家族からのメッセージと手作りのお弁当を届けてもらいます。

そんな指令を事務所からもらって、僕は一瞬硬直した。
何せ僕の実の両親は他界している。

ただ、すぐに僕は自分を蝕む遠慮という病気を払拭して、
グループチャットに投稿する。

数分後、リノヒョンから了解という短いメッセージ、
ヨンボギヒョンからは♡がふんだんに散らばったもの、
スンミニヒョンからは頑張れ!というスタンプが送られてきた。
三者三様だな。
この3人は全く違うのに、集まると何となくまとまりがあるのが不思議だ。
そんな依頼を忘れかけたころ、最終審査に向けたレッスンも大詰めで、
他の候補者と共に一部屋に集められると、そこにはそれぞれの席に紙袋が置かれていた。
事務局から開けてみてください、と言われて、袋を覗き込むと、
僕のものには風呂敷のような渋い布に包まれたお弁当箱が出てきた。
IN
IN
うわぁ…。
開けると色とりどりのおかずが詰め込まれている。
一番上には引っ越してきた当初一番最初に食べたアジフライと、
プラスチックのケースに別にブラウニーが入ってた。

『最終審査まで、頑張れ』
『アジフライは僕が揚げたよ♡
ブラウニーもイエナのためだけに、今回は焼いたからねー♡』
『ファイティン』

中にはヨンボギヒョンからのを除くと、なんとも質素なメッセージカードが入っていた。

その他に水筒も入っていて、“梅ジュース”とラベルが貼ってある。
僕の部屋から見えた梅の木。
徐々に年齢を重ねて梅の実も少なくなってきているようだが、
シーズンになるとそれをとってつけておいて梅酒とジュースを作るのが毎年の恒例行事と聞いた。
できたものを水筒に詰めてくれたようだ。
IN
IN
僕、両親は亡くなってるんです。
選考が進んでいくと、プライベートなことを話す場面も多くなって、
家族のエピソードを話すように言われる。
IN
IN
ここに来る前、1年間もなかったですけど、そこでは腹違いの兄達にお世話になっていました。
インタビュアーの方が、どこまで聞いていいのか、悩んでいる。
だから、僕が進んで口を開いた。
IN
IN
寂しくなかったです。
兄達は優しかったし、よくしてもらったし、
騒がしくて、宿舎にいるみたいでした。
僕がやりたいことを尊重してくれて、サポートしてくれたのも兄達でした。
他の候補者より質素に見えたお弁当や包み紙もリノヒョンらしくて懐かしい。
あの人は、人に羨ましがられるほど、見た目が美しいのに、無駄に装飾しないところがある。

ヨンボギヒョンは、しっかりメッセージカードの中で自分の成果をアピールしている
最近お店で習ったという魚のおろし方で、自分でフライを作って、
今回は僕のためだけにブラウニーを焼いたこと、
その他にカードの余白がなくなるくらいの激励のメッセージ、
リノヒョンがいつも番組を見てられなくてヨンボギヒョンの後ろに隠れながら観ていること、
などをちゃんとチクっている。

スンミニヒョンのメッセージはいたってシンプルで、
イエナならできる、ファイティン、と書いてある。
IN
IN
小さい頃、両親は歌って踊る僕を観て喜んでくれました。
その時の夢をヒョン達が繋いでくれたんです。
この姿を両親に見せたかったなとも思う。
でも、兄達に出会えたことは感謝してる。

そんなことを話していくと、僕ではなく、インタビュアーのお姉さんが涙ぐんでいて、僕は焦ってしまった。
甘酸っぱい梅のジュース。
いつか僕が成人になったら、ヒョン達と梅酒も飲んでみたいな。




END






某オーディション番組でこんな演出があったので、書いてみました。
梅の木のエピソードを書こうと思ってて、入れられなかったのと、
イエナがあんまり最後の方出てこなかったので。

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