建て付けの悪い扉を開けると、ヨンボガが笑顔で出迎える。
早い時間のせいか、今日はそんな足取なのか、まだ客はまばらだ。
そう軽口を叩きながら二人は笑う。
俺たちは今日の定食二人分と、俺用にビールを一本頼む。
それはそれで楽しみのような気もする。
まだ30前後で、成人した息子と酒を交わすみたいな人生、想像しなかった。
余計なことを言いそうなスンミナの脚を机の下で蹴る。
それに笑うヨンボガは、案外察しがいいところもあるから、もう色々と気づいているかもしれない。
兄弟のグループメッセージでそんな連絡が来ていたことを思い出す。
練習生生活をしている末っ子は、順調に夢を叶えるべく階段を上っているようだった。
それには血が滲むような努力をしてるだろうが、
イエナが弱音をはくことはなかった。
当然ながら、オーディション番組に出たからといってデビューが確約されるわけではない。
その過程で審査され、落とされる可能性だってある。
応援するしかない俺は、見てるだけで心臓が破裂しそうだ。
そんなことを思っていると、スンミナが軽く笑う。
俺だって、自分のときはそんなに緊張しなかった。
やれることはやったから、あとは結果を待つだけと思ってたからだ。
ただ、見守る立場は違う。
ダメだったときのガッカリした顔や何かもっと自分にできることがあったんじゃないかと後悔しそうで、
気が気じゃない。
ヨンボガが机に置いたビール瓶を傾けて、一杯煽る。
汗かいたのもあって、染み渡る。
最終審査まで行くことを疑っていない二人に、少し笑いが漏れる。
イエナもこのくらいのテンションで見守られた方が気が楽だろうか。
俺がイエナにできることなんて、頑張れ、とメッセージを送るだったり、
画面の前で手に汗握るくらいだ。
結果がどうなるかはわからないが、次に会うイエナは一回りもそれ以上も成長した姿だろう。
それを楽しみに、またグラスのビールを煽ると、
スンミナに『ヒョン、おじさんくさい』と笑われたので、
また脚を蹴っておいた。
END














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!