色んなことがあった秋も終えて、年も越して寒さにも慣れてきた。
ヒョン達との騒がしい生活も慣れたところだったが、僕はと言うと、週末だけ都心に練習生として通う、慌ただしい生活を送っていた。
幸運にも声をかけてもらったダンスの地区大会から、練習生になるべく挑戦したオーディションに通過して、
通いでレッスンに加わっている。
しかしその生活も三学期が終わったら、拠点を都内の寮に移る予定だ。
本格的な練習生生活に思いを馳せてる、2月のそんなときだった。
振り向くと、顔を真っ赤にして、立っている女の子。
僕が何か尋ねる前に、目の前に可愛らしくラッピングされた箱を差し出された。
そう言われて僕が差し出された箱を受け取ると、彼女は名前も告げずにバタバタと去っていってしまった。
帰り道一緒になったスンミニヒョンが、そう言いながら笑う。
そう言うヒョンも片手に大量チョコが入った袋を抱えている。
でも、僕は知っている。
スンミニヒョンは自分宛てのチョコを、好きな人がいるから、と断っていることを。
有名だよ、と同級生の女の子が教えてくれた。
スンミニヒョンが好きな人って誰なんだろう。
そうヨンボギヒョンがやけに不恰好なブラウニーを僕たちに渡す。
その横には可愛らしくラッピングされた、いかにも本命向けのものがある。
なるほど。
本命向けに綺麗に切ったブラウニーの切れ端を僕たちに寄越したということか。
昨日キッチンから甘い匂いがしたから、何かしてるんだろうというのは分かっていたが。
ヨンボギヒョンは失恋したと大泣きした数ヶ月後、また彼氏ができたらしい。
リノヒョンも、スンミニヒョンも泣かれるのも鬱陶しいが、惚気られるのもウザい、と顔を顰めている。
じゃーねっ、いってきまぁす!と元気に飛び出していくヨンボギヒョンを見送り、
自室に上がって、もらったチョコのラッピングをほどく。
中には市販のお菓子と共に、メッセージカードが入っていた。
『大会で踊る姿、かっこよかったです。
応援してます。
頑張ってください。』
名前も書いてない。
僕に伝えたいだけで、届けてくれた想い。
事務所で集められたときに、事務所の人から言われた言葉を思い出す。
愛されることを当然だと傲慢になってはいけない。
でも、好意には、素直に感謝を、パフォーマンスを返さなければならない。
僕は、当然だとは思わないけれども、素直に愛されることにまだ慣れない。
何で僕なんかを。
そんな思いが拭えない。
でも、素直になれるように、受け止められるように。
この家にきて、3人の兄に囲まれて、少しはわかってきたかもしれない。
3人は、僕を認めてくれるし、僕の想いを受け止めてくれる。
それと同じように、僕が誠実に懸命に生きてたら、それを受け止めてくれる人がいるかもしれない。
そう思うと、少し勇気が出る。
メッセージカードに感謝の言葉を返しながら、個包装されたチョコを、一粒口に放り込む。
それはほろ苦く、カカオの香りと共に、僕の口の中で溶けた。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。