第24話

カカオにのせた想い
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2025/03/11 21:20 更新
色んなことがあった秋も終えて、年も越して寒さにも慣れてきた。
ヒョン達との騒がしい生活も慣れたところだったが、僕はと言うと、週末だけ都心に練習生として通う、慌ただしい生活を送っていた。

幸運にも声をかけてもらったダンスの地区大会から、練習生になるべく挑戦したオーディションに通過して、
通いでレッスンに加わっている。
しかしその生活も三学期が終わったら、拠点を都内の寮に移る予定だ。
本格的な練習生生活に思いを馳せてる、2月のそんなときだった。
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アイエン、くん?
振り向くと、顔を真っ赤にして、立っている女の子。
僕が何か尋ねる前に、目の前に可愛らしくラッピングされた箱を差し出された。
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バレンタインっ、チョコです!
受け取って、くださいっ!
IN
IN
あ、ありがと…。
そう言われて僕が差し出された箱を受け取ると、彼女は名前も告げずにバタバタと去っていってしまった。
SM
SM
一躍有名人だもんね。
うちの学校から有名事務所の練習生が出るなんて。
帰り道一緒になったスンミニヒョンが、そう言いながら笑う。
そう言うヒョンも片手に大量チョコが入った袋を抱えている。
SM
SM
僕のはほとんどモテる兄二人分宛て。
それに今年は人気者の弟宛も加わったけど。
でも、僕は知っている。
スンミニヒョンは自分宛てのチョコを、好きな人がいるから、と断っていることを。
有名だよ、と同級生の女の子が教えてくれた。

スンミニヒョンが好きな人って誰なんだろう。
FL
FL
あっ、おかえりぃ♡
ハッピーバレンタイン♡
そうヨンボギヒョンがやけに不恰好なブラウニーを僕たちに渡す。
その横には可愛らしくラッピングされた、いかにも本命向けのものがある。
SM
SM
おこぼれ、というか、切れ端ありがとう。
なるほど。
本命向けに綺麗に切ったブラウニーの切れ端を僕たちに寄越したということか。
昨日キッチンから甘い匂いがしたから、何かしてるんだろうというのは分かっていたが。
FL
FL
いえいえ、切れ端でも味は保証するよー。
SM
SM
これからデート?
FL
FL
うんっ♡
今日は昼勤だけだから、チャンビニヒョンのお家でぇと♡
ブラウニーと僕のチョコがけ、味わってもらおうと思って♡
SM
SM
…胸焼けしそう。
ヨンボギヒョンは失恋したと大泣きした数ヶ月後、また彼氏ができたらしい。
リノヒョンも、スンミニヒョンも泣かれるのも鬱陶しいが、惚気られるのもウザい、と顔を顰めている。

じゃーねっ、いってきまぁす!と元気に飛び出していくヨンボギヒョンを見送り、
自室に上がって、もらったチョコのラッピングをほどく。
中には市販のお菓子と共に、メッセージカードが入っていた。

『大会で踊る姿、かっこよかったです。
応援してます。
頑張ってください。』

名前も書いてない。
僕に伝えたいだけで、届けてくれた想い。
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『この業界で生きていきたいなら、愛されることに慣れてはいけません。
でも、愛されることを、素直に受け止めなさい。
そして、誠実に返しなさい。』
事務所で集められたときに、事務所の人から言われた言葉を思い出す。
愛されることを当然だと傲慢になってはいけない。
でも、好意には、素直に感謝を、パフォーマンスを返さなければならない。

僕は、当然だとは思わないけれども、素直に愛されることにまだ慣れない。
何で僕なんかを。
そんな思いが拭えない。
IN
IN
…ありがとう。
でも、素直になれるように、受け止められるように。
この家にきて、3人の兄に囲まれて、少しはわかってきたかもしれない。
3人は、僕を認めてくれるし、僕の想いを受け止めてくれる。
それと同じように、僕が誠実に懸命に生きてたら、それを受け止めてくれる人がいるかもしれない。
そう思うと、少し勇気が出る。
メッセージカードに感謝の言葉を返しながら、個包装されたチョコを、一粒口に放り込む。
それはほろ苦く、カカオの香りと共に、僕の口の中で溶けた。

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