静の口がゆっくりと開いた。
冴夜は、プチパニック気味で、頬に手を当てた。
パシッと、強引に手首を握ると
静がズンズンと歩き、冴夜は、後ろにある
ハンバーガー屋さんからドンドン遠ざかって行った。
静が怒っている顔をしたので、残念だが
今日の分のハンバーガーは、諦めることにした冴夜。
静に連れて来られたのは、街全体が見渡せる
小さな丘の上だった。
フェンスを握り、呑気に景色を楽しむ
冴夜を、鼻で笑いながら静が、話した。
静が、話していると言うのに、
月が見えたなどと、一人で騒いでいる冴夜。
ぷにっ
パッ
静は、ガクッと肩を落とすと
もう一度話をする。
静は、ハンっと胸を張ると…
威張った後に、照れ臭くなったのか
後の方の言葉を濁らせた。
静君は、誰よりも意地悪で
たまに怖くて、デリカシーが
ない時もあるけど…
秘密がバレても良い、太っていた
事も、買い食いを見られたくない
という悩みも、静君だから、打ち明けら
たんだと、今は思った冴夜だった。
ニシシと、静君が意地悪な顔で
笑った。少しムカついた冴夜だったが、
彼氏になった静君に、変な事をされ
そうで、今から顔が、青くなっていた。
ハンバーガー屋の事、忘れずに
いてくれて嬉しい。
そう頷いた冴夜は、自然と自分から
静君の手を握り、それは初々しいカップル
そのものだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。