走っている途中、道端に倒れた自転車が目に入った。
不法投棄だろう。フレームは錆び、長い間放置されていたことが一目でわかる。
考える暇はなかった。
───これに乗れれば。
ほとんど飛びつくように跨がり、ペダルを踏み込む。
脚が悲鳴を上げる。肺が痛い。
それでも止まれなかった。ただ前へ、前へと必死に漕ぐ。
そんな事を考えながら、
しばらく漕いでいると、緑色の箱が見えた。
公衆電話。
自転車を投げ捨て、ボックスへ駆け込む。
扉を乱暴に閉め、受話器を掴んだ、その瞬間。
指が止まった。
家?それはダメだ。
距離も、今の状況も、全部が噛み合わない。
夜蛾先生は……今日は任務があると言っていたし。
焦りが胸を締めつけ、喉が詰まる。
そのとき───ふいに''ある人''の声が蘇ってくる。
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ポケットから財布を出して、10円玉を入れる。
受話器を握る手に、無意識に力がこもる。
間違えないように。
それでも一刻も早く。
記憶に刻み込まれた番号を、震える指で、急いで押した。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。