第44話

▷▶[番外編]🍿🎬📽
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2026/01/18 01:03 更新
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今日は久しぶりのオフだった。
目覚ましをかけなくてもよくて、任務の連絡も来ない。

硝子
硝子
……全員予定空いてるって、逆に怖くない?

硝子ちゃんがそう言うくらいには、滅多にない日だった。



そんな貴重な休日をどう使うかというと──
なぜか私たちは、映画館に来ていた。




***




悟
……で? 結局、何観るんだっけ?

隣で五条くんが、気の抜けた声を出す。
五条くんはいつもこうだ。テンションが高いか、完全にオフかの二択。
あなた
これだよ

私は壁のポスターを指さした。
そこには、今話題の恋愛映画。淡い色合いのビジュアルが目を引く。



傑
へぇ、良さそうだね

夏油くんが穏やかな声で言う。

硝子
硝子
これ観たら、恋したくなるらしいよ

硝子ちゃんが、ガラケーから目を離さずに言う。



悟
……は?

五条くんの声が、ワンテンポ遅れて落ちた。
悟
(あなたの下の名前が恋愛したくなる……?つまり、ワンチャン……?)
悟
よし、これ観よう。絶対これ!
やけに力の入った声。
あなた
……え、あ、うん?
あなた
(五条くん、そんなにこの映画観たかったんだ……意外だなぁ……)


傑&硝子
「分かりやす/分かりやすいね」


夏油くんと硝子ちゃんが、同時にため息をついた。



***


チケットの飲み物を買って、シアターに入る。



席は、夏油くん・五条くん・私・硝子ちゃんの順。




暗くなって、映画が始まる。

スクリーンでは、切ない音楽、すれ違う男女、雨のシーン。

……なのに。
あなた
(昨日の任務、地味にしんどかったな……)


意識が、じわじわ遠のく。
あなた
……Zzz‥ᐝ


気づいた時には、私は五条くんの肩に寄りかかっていた。

あったかくて、ちょうどよくて。
そのまま、意識は深く沈んでいく。






***



──その頃、隣の席では。
悟
っ!?
五条の体が、目に見えて強張った。
悟
(え、ちょ、近……っていい匂いする!?起こす? いや、起こしたら悪い?ていうか心臓うるさくない!?)



身動きが取れない。


肩に伝わるあなたの下の名前の体温。


規則正しい寝息。


悟
…………っ!!!
悟
(俺……誘われてる!??)
※誘われてません
※爆睡してるだけです。



悟
(映画どころじゃない……!!)



一方その頃のあなたの下の名前は───
夢の世界で、なぜかチュロスを食べていた。




***






エンドロールが流れる。
硝子
硝子
……終わったよ
あなた
……
硝子ちゃんの声が聞こえる。

傑
あなたの下の名前、よく寝てたね
あなた
え……?
慌てて前を見ると、スクリーンは真っ暗だった。
あなた
もう終わり!? え、何も覚えてない……
悟
それ、こっちもだから

隣を見ると、なぜか顔が赤くなっている五条くんがいた。
あなた
(……暑かったのかな?)


硝子
硝子
五条、映画どうだった?
悟
……知らない。
硝子
硝子
は?
悟
内容が一ミリも入ってこなかった
傑
悟も寝てたのかい?
悟
いや、硬直してた
傑&硝子
は?
あなた
(……硬直?気絶してたってこと?)





──結局その日。

映画の感想を語れなかったのは、
爆睡していた私と、
なぜか硬直(?)していた五条くんの二人だけだった。










そして私はまだ知らない───
その「最悪に集中できなかった映画」が、
五条くんにとっては、人生で一番心臓に悪い上映時間だったことを。


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