第17話

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2025/12/28 13:30 更新
朝の訓練場。


昨日の騒がしい空気とは違い、少し静かだった。

霧島ルイ
あれ?
今日は琴沢補佐いねぇのか?
海坂ナギ
なんか、地下都市の見回りに
行ったらしいわよ。
朝からいなかった
朝日桜夜
…あの人、見回りもするんだ


というか……あれだけ眠そうにいつもしているのに、ちゃんと仕事してるんだ


そんな失礼なことを考えていると、
白羊副隊長が静かに歩いてきた。

白羊
みなさん、集合をお願いします





白羊
琴沢補佐は本日、地下都市の巡回に出ています。
今日は私が単独で訓練指導を行います



霧島ルイ
(……あれ?なんか怖くね?)




白羊
昨日の基礎メニューは、
補佐が“やわらかめ”にした物。
白羊
“本来の訓練は、もう少しだけ負荷が高くなります”
海坂ナギ
ちょ、ちょっとだけ?
白羊
そうですね。


白羊副長は軽く微笑んだが、その瞳は昨日とは少し違い、ちょっと怖かった










訓練スタート
白羊
では、始めます























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白羊
まずは剣の基礎姿勢の復習。
昨日は“立てていた”というだけで合格でしたが、今日はそうはいきません
白羊
私は琴沢補佐とは違い
厳しいですからね。

白羊が構える。

その動きは“静か”。
なのに、空気が変わる。



うそ……昨日の琴沢補佐のモードに似てる


霧島ルイ
っ……これ、やばいやつだ
海坂ナギ
昨日より……
いや、全然圧あるんだけど



白羊
ではひとりずつ、私の剣を受けてください。
正しく受けられなければ転びます


静かに、淡々と宣言。

白羊
手加減はしませんよ?


こ、怖い……!



そして——


白羊の剣が、静かに、でも正確に、みんなの間合いへ踏み込んだ。
























































 

 






────────────
──────
──






















































持久走

白羊
全員、外周15周です。
昨日より少ないので、大丈夫ですよね?
霧島ルイ
え、昨日より少ない?
いや昨日 10周……
白羊
“一周の長さ”が違います
霧島ルイ
地獄!!!
海坂ナギ
いやだあああ!!!
白羊
文句言ったのでもう1周
プラスしましょうか
海坂ナギ
いえ、やったぁぁ!
と言いました(キリッ
白羊
そうですか。
聞き間違いだったようです笑


死ぬ……


というか、海坂さん絶対“いやだぁぁ”って言ってたよな…













白羊副長は淡々と、しかし横ではしっかり観察している。

白羊
霧島くん、腕が下がっています
白羊
海坂さん、呼吸が乱れすぎです
白羊
桜夜くん、いいリズム。ですが後半が落ちています



ぜ、全部見られてる……!





































反応訓練

白羊
最後は反応速度テストです。
昨日より高度化しています


白羊副長がボタンを押すと、
床のパネルがランダムに光りはじめた。

海坂ナギ
うわっ速っ!
霧島ルイ
昨日の倍くらいない!?



白羊
大丈夫です
みなさんならできますよ


その声だけは優しい。
だけどメニュー自体は鬼だった。




……これ、琴沢補佐の“本気モード”よりきついんじゃ……?
























白羊
はい、今日はここまでです


霧島は、地面に倒れ込む
霧島ルイ
し、死んだ…ハァ、ハァ
新人たち
オ、オレたちの足、もう飾りじゃん……


とか、言っている



と、余裕ぶっこいているが
正直僕も疲れた
海坂ナギ
ねえ……琴沢補佐いない日の方が
地獄ってどういうこと?
朝日桜夜
白羊副長、実はこっちの方が
“素”なんじゃ…
霧島ルイ
やめろ!想像するだけで怖ぇ!


海坂ナギ
というか、私たちまだ新人でしょ
海坂ナギ
昨日が初日で、これが二日目って…
朝日桜夜
たしかに…笑




白羊副長は淡々と片付けながら、
しかしどこか柔らかく微笑んだ。

白羊
お疲れさまでした。
白羊
琴沢補佐が戻るのは
夕方の予定です。
白羊
伝えておきますね
“みんな頑張ってました”と


優しい……けど怖い……


やっと“地獄のようで優しい”訓練が終わった






























































































































































































その夜 寮の廊下にて(桜夜視点)



男子寮の部屋で、霧島と同室の堀(仮名)が
ぐったりしていた。


霧島ルイ
マジで今日は地獄だった……
白羊副長のあの笑顔……忘れられん
堀(モブ)
優しい声で厳しいこと言う人が
一番怖いんだよ……



……確かにきつかったけど、得るものはあったな



白羊副長は適切なアドバイスをしてくれたし、
隊員1人1人のことをよく見てる





あと、意外に楽しかった……

霧島ルイ
桜夜
おまえは耐えすぎなんだよ…笑


そんな会話をして、
消灯時間になり、2人が寝静まった頃——







喉渇いたなぁ
朝日桜夜
飲み物買ってくる


ふたりに声をかけて、
廊下に出た。


夜の寮はしんと静まり返っていて、
足音がやたら響く。



そういえば、琴沢補佐、結局夕方には戻ったらしいけど……



今日は一度も顔を合わせなかった。

きっとまた帰ったら笹田隊長と白羊副長と
ゲーム三昧、もしくは昼寝なんだろう——




いや、昼寝じゃないか。もう夜か




じゃあ、夜寝?





そう思ったとき。



廊下の奥、
訓練場へつながる扉の前で、
小さな声が聞こえた。

白羊
……今日は、やりすぎましたかね?


白羊副隊長の声だ。

思わず足が止まった。
扉が少しだけ空いていて、
中の会話が漏れている。




……え? 誰と話してるんだ?




耳を澄ませると——
琴沢鈴音
別にいい。
あの程度、あの子たちなら問題ないさ


その声は……琴沢補佐。

 
普段より低く、どこか冷静で、
昼とは、まるで別人。



白羊
……本当は、優しくしたいんですけどね。
でも、いずれ地上に出る子たちですから。
弱いままでは……
琴沢鈴音
あいつらも分かってるよ。
強くなきゃ死ぬ。
琴沢鈴音
今の地上は“調査”だの“巡回”だの言ってるが、実際はほぼ“戦場”だ。
甘やかして送り出す方が酷だろ
白羊
……鈴さんは、優しいですよね
琴沢鈴音
……優しくなんかない


きっぱりと言い切る声。



……え?



ちょっと、間に失礼しまーす

多分文字小さくて見えづらいと思うので

視点変えまーす


白羊視点

琴沢鈴音
私がいくら倒しても、雷獣は減らない。
毎日どこかで誰かが死んでる。
琴沢鈴音
私の力なんて、結局ただの“延命”
琴沢鈴音
それなのに、また背中を預けられる仲間が増えるのが、怖いんだよ
白羊
……
琴沢鈴音
だから、強くなってもらわなきゃ困る。
あいつらには、生き延びてもらわないと
その言葉には、
怒りや焦りではなく——


“願い”のようなものが滲んでいた。

白羊
……鈴さんも、本当は怖いんですね
琴沢鈴音
当たり前だろ。
誰だって、死にたくないし
……誰も死なせたくない


まぁ、当たり前だろう 

鈴さんは、こう見えてもまだ十六歳だ



命を背負う物としては、若すぎる
朝日桜夜
琴沢補佐って……そんなふうに思ってたの?(影から)


昼のゆるい雰囲気からは想像できないほど、
重くて、真っ直ぐな気持ち。
白羊
じゃあ、私も同じ気持ちを込めて
明日も指導しますね
琴沢鈴音
頼む。
あいつら、思っていたより伸びしろあるし……
琴沢鈴音
それに今期生には、1人気になる奴がいるから


気になる奴…か


多分あの子だろうなぁ

私も正直気になってましたし


琴沢鈴音
まぁ、立ち話はこれくらいにして
琴沢鈴音
戻るぞ
白羊
はい



朝日桜夜
(やばい、こっち来た!!!)








コツ、コツ


 




琴沢鈴音
というか、
なんでいつも敬語なんだ?
琴沢鈴音
白羊の方が私より年上だろ?
なんなら、地位も
白羊
何言ってるんですか、
私は普段から敬語ですよ!
白羊
それに、鈴さんの方が先にここ天窮機関にいたんですから、実質先輩…
琴沢鈴音
まぁ、私の場合、異例みたいなもんだし…


羊(わた)
羊(わた)
めぇ!
白羊
うわっ!びっくりした

気づいたら琴沢補佐の横には、
あの羊“わた”がのそのそ歩いていた。

琴沢鈴音
今日も出迎えか?
琴沢鈴音
ありがとな(^^)


と言って“わた”をなでる鈴さん

わたは気持ちよさそうにしている






“この何気ない空間がずっと続きますように”







なんて、淡い期待抱いてはダメなことはわかっている


でも、少しだけ期待してみたい





















この、“美しくも儚い残酷な世界に”


































琴沢鈴音
何してるんだー?もう、寝るぞー


な、いつの間にあんなに遠くに!
琴沢鈴音
部屋戻ろー!
白羊
はい!





















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すみません、長くなっちゃいました笑

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