ある日ぽっちゃり猫を助けたら
よその世界の執事の主になった
これは 私と執事たちのお話
朝の支度をテキパキとこなして
私の髪の毛を楽しそうに梳いているイザベラを
鏡越しに見やれば、
少しだけ小首を傾げたイザベラの髪がサラリと揺れる。
初めて会った時よりも大きくなったイザベラは
身長だけでなく見た目も立派なレディだ。
そもそも西洋人顔であるので
年よりも大人びて見えるのは確かなのだけれど・・・
朝食後にナックと屋敷の掃除を始めたイザベラを
廊下の影からこっそり観察してムーに囁けば
ムーが丸い目をもっと丸くして首を傾げた。
普段フラグとか気にするくせに
イザベラの変化もわからないのだろうか。
後ろからかけられた声に顔を上げれば
邸の修繕中なのか、手にいくつかの工具を持ったボスキ。
そういえばイザベラはボスキを慕ってたな?
はぁぁぁぁあ?!
どこの馬の骨だ私は何も聞いてないぞ!!!
ガシッとボスキのポニテを掴めば
珍しくきょとんとした表情をしたボスキが
少しだけ笑って肩を竦めた。
当然のように言うボスキに一度言葉を飲み込む。
私の世界の感覚ならまだぜんっぜん!早いのだけれど
この世界の常識はわからない。
そもそもハナマルのとこの子たちも
15歳くらいで1人前として働き先へ自立した。
成人の観念に関しては何も言えないのだ。
ボスキに呼ばれてギュッと唇を噛む。
若干睨み上げてる目つきにはなるが妥協しろボスキ。
━━━納得いかないのだ
・・・・と、まぁ
ボスキにプチ八つ当たりをしたのが1週間前。
目の前で腰低く挨拶をしている接待役とやらに
対応しているベリアンの後ろで無言で腕を組んだ。
東と中央の親善使節として
東の大地のフガヤマに到着したのがつい先ほど。
フガヤマでは夏の期間祭りを開催していると、
宿泊先の旅館の窓から見下ろす街並みは
夏の温泉街みたいに街全体が夏祭りの雰囲気だ。
それは別にいいのだけれど。
今回全員で来るようフィンレイに言われたから
イザベラも、と誘おうと思ったら
ベリアンとルカスにNOと言われたのだ。
イザベラも大丈夫、と留守番にまわって
正直とても複雑だ。
3日間の観光スケジュールを話していた接待役に
ベリアンが丁寧にお断りをして退出させてから
さて、と私に向き直った。
主にイザベラの教育に携わっていた3階組の
信頼感の厚さに一度深呼吸して頷く。
いまさらどうこう言っても変わらないので
イザベラとは帰ったら話をしようと決めて顔をあげた。
軽いハナマルの言葉が終わる前、
早押しクイズ並みに勢いよくあがった挙手に
ムーがわぁ、と呑気に感嘆した。
いつもみたいな討伐や貴族の依頼じゃない分
和やかな修学旅行みたいな雰囲気に、
ボスキが愉快そうに笑った。
穏やかな雰囲気を出しつつ、
ハウレスに辛辣なふたりにベリアンが苦笑して
結局各階の執事たちが半日ずつ交代することになった。
毎回そうだからそんな気はしてた。
まず地下組と縁日に繰り出せば
焼きそばやらとうもろこしやら
夏祭りの定番のお店がたくさん並んでいて
懐かしいなとフルーレ作の浴衣の裾をひらりと揺らす。
ラトは東の大地出身だけれど
孤児院やら監獄やらでお祭りを知らなそうだしな・・・
焼きもろこしを買いに行ったフルーレとラトを見送って
隣に立っているミヤジを見上げた。
ふむ。
ならこのお祭りに乗せられて
殺気増し増しの集団も捌くのは訳ないな??
人混みに紛れて体当たりしようとしてた野郎に
体をひねって前へ足払いする。
急に転んで人混みのざわめきが一瞬止まる。
それでも祭りの雰囲気にすぐざわめきは戻っていき
ずべっとすっ転んだ見知らぬおっさんに
にこりと笑顔を向けて足でナイフを踏みつけた。
がしっと頭を鷲掴みしたミヤジが
にこやかに屋台の裏へ暴漢を引きずって行く。
人前で出来ない話って怖いなと
他人事のように思いながらムーを右手で掴み寄せ
斜め後ろから伸びてきた手を捻り上げて息を吸った。
屋台のおっちゃんやおばちゃん、
住民に囲まれて引こうとしたおっさんが
イノシシのように爆走してきたハウレスに
宙高く殴り飛ばされる。
お祭りの雰囲気のせいなのか
やいのやいのと喝采を浴びて
まんざらでもなさそうなハウレスが
またもや裏の林へ引きずっていき、
人混みをかき分けて戻ってきたフルーレが
とうもろこしを片手に首を傾げた。
とうもろこしをフルーレから受け取る。
まだちらほらと向けられる視線に
ラトがちらりと周りを見やって
それから私の持っているとうもろこしをかじった。
とうもろこしのカスを手で取ってあげれば
ガシリと取った手を握られる。
じっと手を見つめたあと、
おもむろにラトがカスを摘んだ指を
パクリと自分の口に咥えた。
テンション爆上がりのフルーレとムーに
我関せずなラトがちゅう、と指を吸って
摘んでたとうもろこしと、
タレまでしっかり舐めて口と手を離した。
そのわりに全部食べてたけどな?
真っ赤な顔でラトをぽかぽか殴ってるフルーレに
尻尾をボワッと逆立てたムーと苦笑してるミヤジ父さん。
やたら注目を集める3人と一匹を引き連れて
場所を移動すれば、
今度はわたあめやらチョコバナナやら
甘いいい匂いにムーの目がキラキラした。
ムーとフルーレの視線の先には
ツルピカに光る真っ赤なりんご飴の屋台があって
目が合った屋台のおっさんがニカッと笑った。
カランカランと福引みたいな鐘を鳴らして
他のより少し大きいりんご飴を持ち上げた店主に
周りいた数人がわぁ、と拍手をする。
にこにことりんご飴を差し出した店主に
一歩近づこうとしたラトの浴衣を摑んで
でかいりんご飴を受け取り、
相対するように首を傾げてにこりと笑った。
りんご飴を持った手をそのままカウンターで返し
店主の口を塞ぐように突っ込んで
そのままグリグリと押し付ければ
よくわからないうめき声をあげて
身をよじっている店主におや?と首を傾げた。
そもそも、私は買うなんて言ってないな
押し売りダメ絶対 だ
目をギラつかせているラトの腕に抱きついてる私に
後ろから聞き覚えのある声が降ってくる。
顔だけ後ろに向ければ
しっかり浴衣を着こなしたナックとルカスがいて
一歩前に出たラムリが
ぴょんと私とラトの横に並んだ。
みんな裏の林大好きだな
ガサゴソと、店主を屋台裏の林へ
連行していったミヤジたちを見送れば
横にいたラムリが猫のように伸びをした。
珍しく同じ意見のラムリとナックに
ルカスが編み込んだ長い髪を揺らしてふふっと笑う。
そういえばあんまり気にしてなかったけれど
今回の浴衣衣装はみんな髪を三つ編みにするんだな
比較的短い髪のラムリとナックも
器用に一房編み込まれている。
この髪型、個人でセットしてるのかなと
ナックを見上げていれば
にこりと笑ったナックがスッと私の手を取った。
きょとんとしたあと、
小さくはにかんだナックの首に手を伸ばして
プンスカしているラムリにムーを預ける。
ぐんっと持ち上げてくれたタイミングで
ナックの後方に、持っていた巾着をブンッと振り抜けば
手にキラキラのおもちゃを持った大人が
3人ほど後方へ倒れ込んだ。
ルカスたちと遊技場区画をまわり、
ナックがカタヌキ屋で無双したり
ムーが金魚すくいでテンションがあがりすぎて
店主に本気で嫌そうにされたりしながら
盆踊りの櫓近くまで移動する。
途中でも何人か体調不良者を捌いたのだが、
櫓に興味を示したラムリに誘われて上がれば
櫓の上からは四方からの視線がよりわかりやすくなった。
盆踊りより下の掃除のほうが得意なんだが・・・
盆踊りはうろ覚えながら、
軽やかに踊るラムリと、
ゆるキャラと勘違いされてるムー共々
夜が更けるまで 盆踊りは続いた。
( ストレス発散にちょうどいい・・・・! )
大輪の花バージョンの夏です
うちの主様は本領発揮です
夏休み時間過ぎるの早すぎ・・・!












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。