ある日ぽっちゃり猫を助けたら
よその世界の執事の主になった
これは 私と執事たちのお話
災禍の監獄を探検して
長髪天使と遭遇してから数日。
ベリアンとロノのギクシャクも改善されて
やっとみんながみんならしくなってきた邸の
だんだん定位置化してきたベレンの膝の上で
フィンレイに出す報告書を書きながら
近づいてくる足音に顔をあげた。
無表情ながらわずかに眉を寄せたバスティンに
書き終えた報告書を横のテーブルに置いた。
この間ベリアンと心の中に入ったけど
うんともすんとも言わなかったからな。
こうしてちょいちょい気配を覚えさせてるのだ。
ついでに悪魔化のモヤモヤも薄まるし
バスティンについていくと
食堂にはロノとベリアンが待っていて
テーブルにはおいしそうなお菓子とお茶が用意されていた。
ベリアン、ビンタ根に持ってるな・・?
穏やかな3人に囲まれて
ロノのおいしいお菓子とベリアンの紅茶を飲む。
ロノが紅茶に合わせてお菓子を、
ベリアンがお菓子に合わせて紅茶を出すと、
お互いに笑いあっている。
仲が戻って何よりだと頷いて、
ひたすらモクモクとお菓子を頬張っている
バスティンのほっぺについたカスをごしごしと拭いた。
家族の団らんは大事だぞ
ケーキに乗ってたいちごを頬張れば
きょとんとした後にロノとバスティンが目を輝かせる。
若干恥ずかしそうなベリアンも
嬉しそうなふたりに小さく笑って同意した。
その夜、
就寝準備前に見張り台から
満天の星空を見上げれば
私を呼び出した本人であるベリアンが
隣で同じように空を見上げた。
空を見上げていたベリアンが
視線を私に移してふわりと微笑む。
今までもデフォルトが微笑みではあったけれど
どこか憂いのある笑みだったベリアンの、
なんの憂いも影もない、子供みたいな笑顔に
ぱちりと目を瞬いた。
むしろ今回は私よりもバスティンが功労賞だと思うぞ?
バスティンが悪魔化を乗り越えたから
前以上にロノとベリアンのことを見てるし
そのバスティンだって
ロノとベリアンがいたから悪魔化が解けたのだし。
うん、巡り巡るってこういうことか。
手すりに置いていた手を両手で包まれる。
そのままやんわりと引き寄せられて
ベリアンの口元に指先が触れた。
ちゅ、ちゅ、と指先、手の甲に触れる口に
なんだがむず痒くて口をぎゅっと閉じる。
・・・・・わかってはいるんだ
くすぐったいって爆笑しちゃいけない雰囲気なのは・・!
微笑んでこちらを見つめたまま
手から手首へと滑って血管に沿って舐められる。
なんだこれ。
我慢大会か?
・・・あ、ベリアンの頭の小さい触覚
だんだんウミウシに見えてきたわ
白い体に赤と黒のラインが入ったウミウシ
危うくウミウシと呼びそうになり
ハッと我に返りこほんと咳払いする。
いつもより近いベリアンを見上げれば
手は離さないままベリアンがまた微笑った。
・・・・なんかベリアンの笑顔怖いんだが。
私がお守りしますし、と軽く付け足されて
反射的に頷きかけた頭をぐりっと根性で横に倒す。
あれ、いまベリアン普通に言ってたけど。
なんと・・・・!
てことはルカスやミヤジもわかってそうだな?!
にこにこと見下ろしてくるベリアンを
一度はぁ、と息を吐いてからじとりと睨む。
これだけは言いたいのだ。
ビシッと指を突きつければベリアンが破顔する。
真面目に言ってるのに、と眉を寄せれば
ガタガタっと屋上のドアが外れて
大きい影がいくつも雪崩れる。
なんだと振り向けば、
ぴょんっと人の山を身軽に乗り越えたラトとラムリが
そのまま文字通り飛びついてきた。
えぇぇ・・・・・
そんなにずっとはイヤだ
思いっきり顔に出せば
シュタッと起き上がったハウレスやテディ
その後ろからフェネスやユーハンなど
いつもの面々が見張り台に集まってくる。
いつからいたんだと首を傾げれば
そっと手を離したベリアンがふふっと笑った。
だいたいお子様体型なのではなく
成長途中なのだ!
元の世界に帰れば成長するはず・・・するよな?!
忠犬のふりしてデリカシーない組を
フェネスとユーハンが苦笑いで沈めて
ラトとラムリは我関せずで頭やら手やら
ベタベタと抱きついてくる。
いつもと変わらない執事たちに
なんだ、と拍子抜けして見渡せば
目が合ったユーハンが無言のままにこりと微笑う。
それに小さく笑って
ハウレスの頭を押さえつけている
フェネスの頭に飛び乗った。
(フェネスが立てば私が1番高いぞっ)
(ぶふっ・・・なんですかあなた様っキュンですっ)
(テディ・・・そのキュンて流行ってるのか?)
(はい!俺とムーちゃんで流行らせます!)
(せんでいいわっ)
ベリアンと・・・・・?
ひとまず1階組終了で。
次に行く前にいくつか話挟みますー。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。