ある日ぽっちゃり猫を助けたら
よその世界の執事の主になった
これは 私と執事たちのお話
ポンと朝の爽やかな挨拶をすれば
青白い顔をしたロノが私の顔をみて口を押さえた。
朝からめちゃくちゃ失礼なやつである。
うむ、だろうな
まぁベリアンは真っ白い顔でいつもの笑顔を作っていたが
わざわざ朝食前の朝運動をやめて厨房にきたのだ。
焼酎を強制的に献上させられて
鬱憤晴らしに朝トレに参加しているハナマルの為にも
ちゃんと昨日のことを聞かなければな。
朝ごはん用の野菜をトントンと
リズムよく響いていた包丁の音が一瞬ブレた。
お酒の力を借りれば何とかなるって
ハナマル言ってたけど、全然だな!
まぁそんなとこだろうと思ったけども。
微妙に視線を逸らすロノに、
ルカスからの伝言を伝えた。
ゆっくり数日かけて来た明々の街に降り立ち
ぐぐっと固まった背筋を伸ばす。
ちゃんとした街道で、馬車で来たから
前回来た時よりも疲れてはいないけれど
邸を出発してから時間が経っていて体が鈍りそうだ。
ゴエティア様の鍵の秘密を探りに
再び明々の街に来たのは
私とムーと1階組、地下組のメンツ。
災禍の監獄を調べる為という名目だけれど
ルカスからの、
ベリアンとロノなんとかしてこい圧が凄かった。
会話はしているけども
バスティンに話しかける感じなベリアンたちに
フルーレと隠さずにドン引きする。
我関せずなラトは
引率者のミヤジにそっと襟首を押さえられていた。
各々解散して監獄内を探索する。
ベリアンと上の階から部屋を見てまわるが
広い研究室がいくつかあるだけで
特に面白そうなものも変なものもなかった。
フルーレが監獄の見取り図を描いたけれど
広い部屋がいくつかあるだけで
秘密の部屋とかそんな空間もなさそうだ。
真面目に話し合っているベリアンたちを
バスティンと肉まんを食べながら眺める。
ベリアンたちが間取りをおかしいと思わないなら
私たちにはわからないからな。
バスティンが半分こしてくれた最後のいっこを
はぐっと口にいれて首を傾げた。
なんかデジャブだな?
ハッと顔をあげたフルーレがラトを探しに行って
1階のほうから再びフルーレの叫び声がする。
フルーレ、
ラトが戻ってきてから積極的だし元気だ。
フルーレを追って1階の部屋に入れば
部屋の真ん中でラトが大の字になっていて
なんか楽しいものがあるのだろうかと横にしゃがみ込んだ。
あわあわしているフルーレに首を傾げると
もぞもぞ足元で動いたラトが私の足首を掴む。
ラト、踏んじゃうぞと見下ろせば
ミヤジがそっとラトの手を掴んで降ろさせた。
カツーンとホールのように響く地下空間。
ラトの能力で発見した地下階段を降りて広がっていたのは
ダンスホールみたいな大きな空間で
生き物の気配もない、
不思議な広間に私の声が響く。
床にはまっていた巨大なマンホールみたいのが
古の塔の材質に似てるだとか
結局ゴエティア様の鍵がはまるところはないだとか
なんだか発見してるようだけれど
結局何もわからないまま地下から戻ってきたのだ。
ミヤジの発案で、
裏切り者がいる可能性を考え
今回の地下空間のことは
フィンレイにも内緒にしておくらしい。
みんなが監獄の入り口から出ていくのを見ながら
ぼそりと呟けば、耳のいいラトだけが振り返る。
しーっと指を口に当てれば
きょとんとしたあと笑みの形に目が細められて
横に並んだ私の手を取った。
そうして監獄の入り口を出た時だった。
バスティンの声と同時に
監獄の外で何か硬い物が壊れる音がして
バサリと羽音が降ってくる。
ロノとバスティンの視線の先に
いつもの天使よりも全体的にがっしりした天使がいて
ロノとバスティンからゆっくりこちらに視線を移した。
その割にあんまり喋らないけど。
知能天使と通常天使の間なのだろうか。
もしくは通常天使改造版?
ふわりと飛び上がりきょろきょろと周りを見渡して
確かにちょっと考えてる感じがある。
意思疎通は出来るのかな、とまじまじ見上げれば
ベリアンにぐいっと引っ張られた。
えぇえ・・・・・
いつも戦ってるのに・・・
凄い勢いでNOと言われて眉を寄せる。
ロノとバスティン、
それにラトが天使を引きつけて走り出したので
とりあえず悪魔の力を解放すれば
3人は監獄に走り込んで行った。
残ったのは、
ベリアン、ミヤジ、フルーレ、ムーだ。
フルーレの言葉に
ベリアンとミヤジがシンクロして頷いて
なんとなく釈然としない。
ラトほど問題児ではないと思うんだ。
こっちのメンバー真面目すぎる、と
口を尖らせた時だった。
うわぁーっ・・、とロノの声が上から聞こえて
バッと顔を上げれば
監獄の上層階の窓から天使が飛び出してきて
その手にはロノの武器、
そして武器の先にぶら下がっているロノ。
下に落とすつもりなのか、
ロノごと手を持ち上げる天使に
受け止める為にぐっと足に力をいれる。
駆け出そうとした私の左手を
ガシッと掴んで止めたベリアンを
振り返りざまに顔面をグーパンした。
力の抜けた手を振りほどいて
落ちてくるロノ目掛けてだんっと飛び上がる。
タックルの勢いでロノに飛びつけば
真下に落下していた体が横に逸れて
私ごと地面に転がった。
ぐえって下から聞こえたけれど
真下に落下するよりマシだよな?
下敷きになってるロノの腹の上で体を起こして覗き込めば
ロノが微妙な顔で苦笑いする。
うん、喋れるし大丈夫だな。
バサリと降りてきた天使に
ロノを後ろにして構えた。
伸ばされた手を蹴り上げれば
大してびくともせずに足首を掴まれる。
さっきのラトとは比べものにならない力に
ぐぐっと片足を引っ張られてじゃり、と地面が擦れた。
ザッと影が目の前に降ってきて
掴まれた足が解放される。
天使の手を槍で払ったベリアンの力を解放すれば
フッと鋭く息を吸ったベリアンが
今までにない気迫で天使に斬りかかった。
ガキンっと鋭い音が響き
今までにない硬さに眉を寄せる。
悪魔の力を解放していても入らないダメージに
ぐぐっと体を起こしたロノが叫んだ。
叫んだベリアンに口の端をあげる。
そうして、
目を見開くロノを覗き込んでにこりと笑った。
ガキンとひときわ高い音がたち
天使がバサリと距離をとる。
ぴしりと乾いた音に目を凝らせば
腕が陶器のようにひび割れ始めて
そこを目掛けたベリアンの攻撃によって
ぼろぼろと天使が崩れ落ちた。
ガキンっと響いた金属音に
ぐいっとロノに引っ張られて
再びロノの上に転がる。
パッと顔をあげれば
ベリアンを庇うように剣を払ったバスティンに
相対していたセラフィムがふっと笑った。
イライラしたラトに
セラフィムが鼻で笑ってバサリと飛び上がる。
追おうとしたラトをバスティンがとめて
上空でセラフィムがひらりと手を振った。
あ、それさっき私が殴ったやつだな
微妙に目をそらすベリアンに首を傾げて
まだ座り込んでいるロノの横にしゃがむ。
あの高さから落ちた割に
ぴんぴんしているロノは私を見てニカッと笑った。
いつもの雰囲気に戻った1階組に
ミヤジ、フルーレが静かに微笑む。
ラトも小さくクフフっと微笑った。
ミヤジの掛け声にみんなが踵を返す。
バスティンとフルーレがロノを支えて
ミヤジとラトが毒沼を渡る船の準備にむかう。
みんなの後ろから一歩踏み出せば
後ろから伸びてきた腕に一瞬だけ引き寄せられた。
左耳に触れたベリアンの口と囁き声に
目の前のムーが悶絶してた。
(あなた様っキュンですか?!キュンですね?!)
(いや・・・耳に内緒話されるの苦手なんだが)
(だからそれはキュンですよ!!)
(・・・・・そうか・・?)
キュンを求める猫と躊躇いなくグーパンする主様。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。