目覚めた場所は、あまりにも見なれた医務室だった。
薬草と魔法薬の混ざりあった香りがツンとする。特に包帯なんかが巻かれている様子のない体は、今回はなんの怪我もしていないことを表していた。
あれはなんだったんだろう。ルーピン先生がなにか言った瞬間、意識が内側に引っ張られて、世界が全部ぐるりと反転した。
それからのことは、あまり覚えていない。
どこかなにかの裏側で、外の風景を眺めていた。なんとか抵抗しようとしたけれど、上手くいかなくて……
ただ、暗闇の中で、誰かが……誰かを、呼んでいた気がする。
何も分からない。分からない。自分のことなのに、何も知らない。自分に何が起きているかも、理解できない。
ピースが足りない。仮説でも組み上げるためのピースが。何も無い。僕の手の中には、まったく、何も無い。
扉の先で、呆然と立っているハーマイオニー。手には僕の好きなフルーツがいくつか乗っていた。
ハーマイオニーの表情はみるみる変わり、目には涙が溜まっていく。そしてずんずんと僕の前まで進み、何も言わずに抱きしめられた。
あぁ……また、心配かけちゃったな。
ハーマイオニーはグイッと顔を上げると、真正面から僕を見つめる。
いつもは身長差のせいで、こんなに近くに顔があることなんてないから、ちょっとドキッとした。
ああ。こんな日々が、
君と一緒に居られることが、
あまりにも幸せで、こんなにも色づいている。
本当は、僕はこの幸せを享受するべきじゃないのは分かってる。
もしかしたら僕が、僕が……███かもしれないことも、勘づいている。
でも。それでも。
この幸せを噛み締めていたいんだ。いつかなくなる日が来たって、その日までは。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。