第95話

🦉✩.*˚
227
2025/09/12 11:00 更新










目覚めた場所は、あまりにも見なれた医務室だった。


薬草と魔法薬の混ざりあった香りがツンとする。特に包帯なんかが巻かれている様子のない体は、今回はなんの怪我もしていないことを表していた。




あなた・シアーズ
僕、は……





あれはなんだったんだろう。ルーピン先生がなにか言った瞬間、意識が内側に引っ張られて、世界が全部ぐるりと反転した。


それからのことは、あまり覚えていない。



どこかなにかの裏側で、外の風景を眺めていた。なんとか抵抗しようとしたけれど、上手くいかなくて……


ただ、暗闇の中で、誰かが……誰かを、呼んでいた気がする。



何も分からない。分からない。自分のことなのに、何も知らない。自分に何が起きているかも、理解できない。


ピースが足りない。仮説でも組み上げるためのピースが。何も無い。僕の手の中には、まったく、何も無い。




ハーマイオニー・グレンジャー
あなた……?





扉の先で、呆然と立っているハーマイオニー。手には僕の好きなフルーツがいくつか乗っていた。


ハーマイオニーの表情はみるみる変わり、目には涙が溜まっていく。そしてずんずんと僕の前まで進み、何も言わずに抱きしめられた。



あぁ……また、心配かけちゃったな。




あなた・シアーズ
ごめん
ハーマイオニー・グレンジャー
もう……帰ってこないかと、思ったわ……
あなた・シアーズ
うん、ごめんね
ハーマイオニー・グレンジャー
あなた最近隠し事が多いし……また私は、何も出来ないままなのかもって……
あなた・シアーズ
そんなことないよ。いつも助けられてる




ハーマイオニーはグイッと顔を上げると、真正面から僕を見つめる。


いつもは身長差のせいで、こんなに近くに顔があることなんてないから、ちょっとドキッとした。




ハーマイオニー・グレンジャー
無茶しないで。何かあったら、私にも話して。あなたが大変な時に、何も出来ないのは嫌なの
あなた・シアーズ
うーん……多分?
ハーマイオニー・グレンジャー
ちょっと!そこは「はい」でしょう!
あなた・シアーズ
だってハーマイオニー、僕の最近失敗した魔法薬が部屋をどうしたかまで知りたいの?
ハーマイオニー・グレンジャー
……ちなみに、どうなったの
あなた・シアーズ
全部真っ黄色になった
ハーマイオニー・グレンジャー
それ、どうやって片付けたの……?
あなた・シアーズ
……聞いて驚かないでね?





ああ。こんな日々が、




あなた・シアーズ
まだそのまんま
ハーマイオニー・グレンジャー
……





君と一緒に居られることが、




ハーマイオニー・グレンジャー
マクゴナガル先生に報告するわ
あなた・シアーズ
ちょっ、それだけはご勘弁を!
ハーマイオニー・グレンジャー
い・や・よ!なんで黄色なのよせめて赤か金色にすれば怒られないでしょうに
あなた・シアーズ
いや怒られるよ!?





あまりにも幸せで、こんなにも色づいている。



本当は、僕はこの幸せを享受するべきじゃないのは分かってる。


もしかしたら僕が、僕が……███かもしれないことも、勘づいている。


でも。それでも。


この幸せを噛み締めていたいんだ。いつかなくなる日が来たって、その日までは。









プリ小説オーディオドラマ