彼の声で振り返る。
目が合った瞬間、彼が口角を上げて微笑んだ。
彼がそう言う時は、大体何かある。
私は辺りを見回した。
ふと目にとまったのは暦。
今日は十一月十一日。
私は一箱の菓子を取り出した。
菓子の箱を受け取って暫く見つめる彼。
そう言いながら箱を開けてポッキーを一つ取り出した。
取り出したポッキーを私の口に突っ込んだ。
そう言って、私が咥えた方の反対側を咥え、食べ進めた。
私は驚きのあまり、咄嗟に目を瞑ってしまった。
すると、少ししてから“ちゅっ”と音を立てて唇が触れ合った。
私は何が何だか分からず、惚けてしまった。
私は慌てて彼の服を掴む。
やってしまった。
聞いていなかったとはいえ、何の贈呈品も用意せず、お祝いの言葉も言っていなかったなんて…
謝ろうと思った口を、彼の綺麗な手が塞いだ。
私は、口元に当てられた手を自身の両手で包み、彼を見つめた。
【短くてすみません。ドス君難しい…】
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!