監禁 六日目
今日のマッシュは普段より大人しかった。
まるで死んだ魚のように寝転んで動かねぇ。もう立つ気力も、何も残っていない様な、死んだ目でこちらを見てくる。
「マッシュ」と名前を呼んでみても返事は返って来ない。
ようやく俺だけのものになる気になったか、と心底安心した。
だが、最近やけに上の連中が騒がしい。それにマッシュといつも居たあのフィン・エイムズやランス・クラウンが部屋に来る事が増えた。
ランス・クラウンは感が鋭いと聞く、まさかとは思うが…いや、そんな事は無いか。
バレるはずがない。俺しか入れない地下だ。
どこを探そうとも、見つかるはずがない。
誰にも見つけられない…。
六日目 終了 _ 。
監禁 七日目
バレた。バレてしまった。俺とマッシュに何か関係がある事が。
だから俺はすぐマッシュの元へと走った。誰も入れない地下へと。
このまま他の男にマッシュを取られる訳にはいかない。だが、バレてしまったものはどうにも出来ない。ここを乗り越えたとしても、追われる生活になる。それは俺の体力的にも無理がある。
なら、いっそ _ 。
七日目 終了 _ 。
多分、これが俺の遺書ってやつになるんだろうな。特に残す言葉もねぇし、これからマッシュとずっと一緒なんだ…何も思い残した事もねぇ。
日記の続きで書くのもなんかおかしいからな…最後のページに書くが…
俺は今、一番幸せだ 、 これからも…ずっと _ 。
パタリと一冊のノートの閉じる音が部屋に響き渡る。
その部屋に神覚者一同とウォールバーグ・バイガンは椅子に座り、ライオが読み上げる日記の内容を耳に通していた。
マッシュ・バーンデッド失踪事件から一週間。マッシュ・バーンデッドは遺体として発見された。傍に居た、ワース・マドルの遺体と共に。
発見場所はイーストン魔法学校の地下、恐らくワース・マドルが作ったと考えられる地下で二人は倒れる様にその場で死んでいた。
発見者はフィン・エイムズ、ランス・クラウン。二人は友のマッシュ・バーンデッドを探していたところ、知らない地下への道を発見。その道を進んで行くと…だ。
遺体はまだ生暖かったという。友人…いや、親友以上の仲である彼らにとって、衝撃的な光景だったのだろう。彼らは泣き崩れるようにその場に倒れた。
それからその部屋を詳しく調べるととある一つの日記が発見された。
その内容から推測するにワース・マドルはマッシュ・バーンデッドを七日間監禁し、無理心中に至ったという事。
ワース・マドルはマッシュ・バーンデッドに歪な、歪みすぎた愛を抱いていたという事。
この事件は、世間に晒してはならない…そう、神覚者の考えは固まった。
幾ら規則重視のオーター・マドルでも自身の弟が起こした事件だ…やむを得ないだろう。
マッシュ・バーンデッド失踪事件の真相を知る者は数少ない。
ワース・マドルの日記は公に晒されないよう、魔法局に頑丈に保管された。
決して、触れてはいけない人間の闇…そう、決してあってはならない、 … 。
人間を狂わせてしまう、愛。
歪 な 愛 𝑒𝑛𝑑 _ 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!