父さんにそこまで詳細な話はしなかったが、恋人のことを
夕飯を食べながら簡単に伝えた
いるまに秘密にするように言われていたので、擬似恋人という事情は伏せてある
空になったカレーの皿を前に、父さんは目をつむり、
よく分からない声を出していた
かと思えば突然、リビングの隣にある自分の部屋に向かった
我が家は広いとは言えない、そんな我が家で頑張って
こしらえた簡素な仏壇の前に父さんが座り、故人である母さんに向かって何かを報告しはじめる
自ら口走ったことなのに、兄さんの話になると父さんは
弱気になる
負い目があってのことだと思う
口には出さないが、自分は不甲斐ないせいで息子はいなくなってしまったんじゃないかと思っている節が、父さんにはある
夕食後は各自で過ごす
食器の片付けを済ませ、洗濯物をたたんで制服やハンカチに
アイロンをかけたりする
すると、父さんが風呂から出てきた
湯が冷めないうちに俺も入るとしよう
兄さんは決して、父さんが嫌で居なくなったわけではない
なんでも話す我が家で、兄さんが父さんにだけ話していない
ことがあり、それが関係している
髪と体を洗ったあと、足こそ伸ばせないが、俺には慣れた
安心できる我が家の浴槽で力を抜く
今日は色んなことがあった
明日も、ひょっとしてそうなんだろうか
驚いた。俺にそんなことができるなんて。
恋人ができたことを兄さんに報告したら、どんな反応を
するんだろう
その考えに苦笑し、しばらくしてから浴槽を出る
服を着終わり、髪を乾かそうとドライヤーをとる
ふと、鏡に映る自分が目に入る
少し痩せすぎな、神経質そうな自分がそこにはいた
(ふらっ
突然のめまいに思わずよろける
俺はそのまま布団に向かった












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。