~あなた~
それからしばらくして、スタッフさん達が来た。
カメラとかの機材は、初めて来た時からずっと、お店の奥の方に置いてて
軽い、小さなものしか持ってこないから、楽そうで安心。
・・・初日はね、すごかった。
よくあんなに重たいもの持てるよなぁ。
スタッフさん達も一息着いたところで、さっそく始まった撮影。
なんてことないカフェなのに、
カメラマンさんは、いろいろなショットをとる。
・・・ほんと、すごいや。
このお店だけで、きっと何ページ分も撮れるんだろうな。
やっぱり、プロだ。
・・・そりゃあ楽しいよ。
だって、大好きな人と一緒にいるんだもん。
でも、
いつか絶対、辛くなる。
苦しくなる。
私と亜嵐くんの間には、とてつもなく大きな壁があって、
越えることなんてできない。
それに私は耐えられるかな。
結局は、自分を守るため、なんて最低過ぎるよね。
・・・断りたかったはずなのに、
思いもよらない自分の言葉。
あっという間に撮影が終わって、
機材は片付けに入っている。
・・・急に話しかけないで欲しかった、、
2人きりで、時間が止まったようだった。
ほんと単純だな、私。
亜嵐くんの言葉だけで、
不安だったことが全部吹っ飛んでいく。
チエさん、私決めた。
・・・また、毎日ここで働きたい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!