昨日は久しぶりに本当の意味で満腹になった。
マジでユナありがとう。
本当にただの女神。
サバイバル生活を豊かにしてくれることだろう。
昨晩、リアさんがトンカツに対してだけ「美味しい」とこぼしたのは、本当にそう思ったのか、ユナに気を使ったのか、なんとなくだったのかは分からない。
ただ、とにかくユナはあの無感情モンスター(リアさん)に「美味しい」の一言を言わせたことで、なんとなく満足そうだった。
これは私たちが思ってる以上に大きなことなのかもしれない。
人形にとっては。
ユナは味覚があるって事だよね…なんで、リアさんにはなくてユナにはあるんだろう。
1度人間として、たしかに生きたからなのか。
ユナは甘い物が好きだった。
それは、嘘偽りない事実だと信じたい。
この世界で過ごして数ヶ月経ってる要な気がするけど、
正直、受け入れられてないところもある。
ユナは私を、私たちをここに連れてくるために、私と仲良くなった。
親友だと思ってくれてた?
最初から利用するつもりだった。
ずっと嘘つき。
顔が綺麗なのも。
頭がいいのも。
性格が素敵なのも。
私が憧れてたもの全部作り物で
はーしんどい。
きっと元の世界ではまた裏垢で呟いてただろうな。
お互い様?
今ではスマホもないし、
抱え込むだけ。
でもいいんだ。
スマホもなければ嫌なものもこの世界にはないんだから。
異世界で広大な自然の中で冒険って素敵だと思ってる。
現実世界全部投げさせて都合がいいとさえ思ってる。
周り合わせて作り笑顔。
昔から得意なんだよね、私。
手のひらのハートマーク少し…大きくなってる?
朝食食べたし着替えたし、いつも通り魔法の特訓かな。
だいたい色々できるようになってきたと思うよ。
そろそろ山の外に出ても…
連れてこられたのは森の深く。
陽気に鼻歌なんて歌っちゃて、何をするのか、若干の緊張…じゃなくて恐怖を感じていた瞬間。
パリンッッッ!!
真横から、ガラスが割れたような大きくて高い音。
それと同時に風が吹いて辺りの木が揺れる。
リアさんがどこから出したか分からないホワイトボードを引きずり、ペンを持ちどこからともなく出したメガネをクイッと動かす。
「ふふん」と得意げな姿は
顔が国宝級にいいから正直可愛い。
でもとっても怖い。
リアさんは、ポニーテールを揺らしてくるりと振り向くとホワイトボードに光の速さで見分けるポイントをまとめた。
そんなもん分かるかい!!と思いつつ、少しワクワクしている。
強くなれたと思うんだ。
頭も良くなった気がするんだ。
自分の実力を試したいというか、これはまさしく欲だ。
なるほど…と素直に感じた。
こういう生物の授業は元から好きだったな。
あっ…終わった________________
おっと危ない意識を失いかけた。
ユナの言葉で確かに安心したような気がすっ
うん。嫌だ行きたくない。
痛いの慣れたけどまだそこまでは無理なんですけど。
いや聞いてないよ?聞いてない。
私たちそんな困難に立ち向かえるかっこいい主人公とかではないんですよ。
一気に冷や汗が出てきた。
どうしよう止まらない。
レンなんて完全に目のハイライト失っちゃってるよ!!
ユナさんそこは治せるところまでの負傷はするという意味ですね?
ユナが起きてからずっと思うけど、リアさんのユナに対する接し方は異常な気がする。
ユナだってリアさんくらいに強いのに。
この前だって、魔法の特訓の相手になってくれた時の、ユナが出したゴーレムは私たちじゃ手も足も出ないほどに強かった。
過保護すぎると言うか…依存というかなんというか…
人形の思考方向はよく分からない。
ただリアさんにとってユナは、相当大きな存在なのだろう。
まぁ熊にも勝てたし、な…何とか…
世界を救うなんて大義を掲げてる以上、これくらい頑張るしかない!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。