第21話

弐拾壱
202
2024/04/27 01:17
ゆっくりと目を開けると、真っ暗な世界
ぺいんと
ぺいんと
どこだ…ここ
自分の体は浮いているような感覚で、それはまるで海の中にいるようだった
髪も服も、海の中にいるように漂っている
ぺいんと
ぺいんと
ここか…
しにがみが言っていたのはここの事か
一つだけ明るいところがあるとアイツは言ってたな
でもここはほんとに不思議だ
海の中にいる感覚なのに、息はできるし声も出せる
目を開けているのに全く辛くない
でも体は海の中にいるように重くて動きにくい
ぺいんと
ぺいんと
明るいところ…
言い方はおかしいが、せっかく死んだんだ
これはチャンスだ
少しでもこのループを抜け出す手がかりを…
ぺいんと
ぺいんと
あれ…
1箇所だけ明るく光っているところがあった
手や足を動かして、光に向かって進んでいく
光の真ん中に座り込む青年がいた
ぺいんと
ぺいんと
君…
海霊
海霊
僕は…
声でわかった
『海霊』だ
でも、何か違う
ぺいんと
ぺいんと
どうしてここにいるの?
海霊
海霊
分からない
座り込む海霊の隣に座った
海霊
海霊
僕は、ただ…父さんと一緒に船に乗りたかった
海霊
海霊
真面目に勉強して、頑張って国家試験に合格して…
海霊の目からポロポロと涙がこぼれていた
ここにいるのは海霊じゃない
結時ゆいとさんだ
海霊
海霊
気づいたら周りから妬まれていた
海霊
海霊
僕は何もしてない
海霊
海霊
虐められて、責任を押し付けられて、やってもないミスを全部僕のせいにされた
ぺいんと
ぺいんと
あの日…君に何があったの?
結時さんの目は時夜ときやさんと同じオレンジ色で…でも光がなかった
海霊
海霊
あの日…僕はアイツらに"殺された"
ぺいんと
ぺいんと
海霊
海霊
僕ばっかりが先輩にも船長にも気に入られているのが…アイツらは気に食わなかったらしい
海霊
海霊
深夜…みんなが寝ている時にデッキに連れて行かれた
海霊
海霊
そして、2人が俺の体を押さえて、もう1人が俺の足に錨を付けた
ぺいんと
ぺいんと
錨…
海霊
海霊
気づいたら海の中だった
海霊
海霊
どんどん深い海に沈んでいく恐怖
海霊
海霊
もがいてももがいても…下に引っ張られる。声も届かない
海霊
海霊
だんだん苦しくなって…だんだん力が抜けていって
海霊
海霊
全身の力が抜けて気づいたらここにいた
海霊
海霊
こんな醜い姿でね…
想像を絶するものだった
結時さんがこんな目にあっていたとは
しかも殺された理由が『嫉妬』『気に食わない』こんな事で人を殺すのか?
ぺいんと
ぺいんと
ありえない…
海霊
海霊
もう僕は死んでるから…どうすることも出来ない
海霊
海霊
何故か成仏できない
海霊
海霊
死にたいのに…死ねない…もう死んでるはずなのに生きてるみたいだ…
ぺいんと
ぺいんと
結時さん
海霊
海霊
名前…
ぺいんと
ぺいんと
俺らがどうにかします
海霊
海霊
何言って
ぺいんと
ぺいんと
この事件…全部俺たちが解決します
ぺいんと
ぺいんと
なので…待っててください
と言っても…アイツらが死なないと俺は戻れないんだけどね
TG
TG
今回はここまでです!ありがとうございました!

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