第13話

13.
152
2026/03/10 04:17 更新
あなたs.








































夜は、驚くほど静かだった。












祝宴の灯りが消え、








人の気配が遠ざかって、

















与えられた部屋の扉が閉まった瞬間、






ようやく息ができた気がした。













白いドレスが、重い。







綺麗で、正しくて、逃げ場のない色。









脱がなきゃ、と思うのに。







指が、動かない。















そのまま床に座り込んで、








背中を扉に預けた瞬間――











堪えていたものが、全部、落ちた。





































(なまえ)
あなた
 …… っ 、  
 




































声を出さないつもりだった。









でも、無理だった。














涙が止まらない。









息が、うまく吸えない。










――目が、合った。







ホールの端。







走ってきた、リヴァイ。

















あの人が、そこにいるって分かった瞬間、







全部を投げ出して呼びたくなった。










でも、泣けなかった。









泣いたら、あの人が壊れるって分かったから。




































(なまえ)
あなた
 …… ごめんね 、  



















































床に落ちる涙に向かって、呟く。








私が、選んだ。





そうするしか、なかった。
















でもそれは、







愛してるから、だった。















ノックの音がした。














































エ ル ヴ ィ ン
エ ル ヴ ィ ン
 … 入ってもいいか 


































エルヴィンさんの声。















慌てて涙を拭こうとして、








でも、もう遅かった。































(なまえ)
あなた
 …… はい 
































扉が開く。









エルヴィンさんは、部屋に入っても







距離を保ったまま立っていた。














私を、婚約者としてじゃなく、











選ばされた人間として見ている距離。














































エ ル ヴ ィ ン
エ ル ヴ ィ ン
 … 無理をさせた 
(なまえ)
あなた
 いいえ 
(なまえ)
あなた
 私が … 決めました 。  
エ ル ヴ ィ ン
エ ル ヴ ィ ン
 君が 、 彼を愛している事は知っている  
(なまえ)
あなた
 …… それでも  ? 
エ ル ヴ ィ ン
エ ル ヴ ィ ン
 それでもだ 
エ ル ヴ ィ ン
エ ル ヴ ィ ン
 私は 、 世界を選んだ 
 


エ ル ヴ ィ ン
エ ル ヴ ィ ン
 君を 、 利用した 
(なまえ)
あなた
 …… 正直ですね 
エ ル ヴ ィ ン
エ ル ヴ ィ ン
 君の前で 、 嘘はつけない 

















































しばらく、沈黙。










私は、ドレスの裾を握りしめながら、言った。





































(なまえ)
あなた
 …… 私 
(なまえ)
あなた
 泣きそうになったんです 
(なまえ)
あなた
 彼が来てくれて 
(なまえ)
あなた
 目が合って …… 





































喉が詰まる。
































(なまえ)
あなた
 泣いたら 、 全部壊れる気がして 
(なまえ)
あなた
 彼が殴られた意味も 
(なまえ)
あなた
 私が選んだ意味も … 











































言葉にならなくて、顔を覆った。







































(なまえ)
あなた
 … だから 
(なまえ)
あなた
 私は 、 泣きません 

































自分に言い聞かせるみたいに。




























(なまえ)
あなた
 でも 
(なまえ)
あなた
 …… 今夜だけは 、  




(なまえ)
あなた
 今夜だけ 、 泣かせてください … 














































エルヴィンさんは、何も言わなかった。









慰めなかった。










触れなかった。

















それが、優しさだと分かっていたから、







余計に、苦しかった。














白いドレスに、涙が滲む。
















誰にも見せない夜。







誰にも救われない夜。















――世界より、あなたを選びたかった。




















その言葉を、






私は胸の奥に、押し込んだまま。

















夜は、静かに、更けていった。

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