ぷらぷら、ぷらり。
ばたばたばた。
足が空を切る
冷たい雨が叩きつけるアスファルト
足がつかない
喉。
そこ一点に、私の全体重がかかっている。
首を絞められてる
犯人は、目の前で私を見下ろす太宰治だ。
白手袋に包まれたその右手が、私の喉笛をつかんでいた。
気管がひしゃげていく。
酸素は一欠片も入ってこない。
肺が焼けるように熱い。
宙に浮いた足は、揺れるだけでどこにも届かない。
太宰が、心底虫酸が走るというように目を細めて吐き捨てた。
いつも余裕綽々という顔が、今は憎悪に歪んでいる。
声が出ない代わりに、私は太宰の腕を必死に掴んだ。
指先から血が出るのも構わず、太宰の腕に爪を立て、肉を引きちぎろうと掻きむしる。
太宰は私を吊り上げたまま、一際強く喉を締め上げると、
そのまま地面へ叩きつけた。
泥水の中に叩きつけられ、肺が無理やり外気を吸い込む。
ひゅー、ひゅー、と激しく息を吸って
生理的な涙がぼろぼろと溢れて
喉が潰れ、もう指一本動かない
それでも私は、這いつくばりながら泥を掴んだ。
こんな理不尽に殺されて、たまるか。
───────視界の端に、黒い革靴が近づいてくる。
血走った眼で、死神を見上げる
死神が、懐から銃を取り出すのが見えた
こんな、こんな最期なんて!!!!!
この、私が!?ありえない、ありえない!!!!!!!
最期に見るのが、こんなクソ野郎なんぞ!!!!!
…………これは、「運命」なんて生温いものではないのかもしれない
もっと悪意に満ちた、誰かの手による「嫌がらせ」?
そうでなければ、私がこんな終わりのはずはないッ!!!!!!!!
あぁ、神よ!!!!
クソッタレの神よ!!
もし次があるなら……貴様という存在も!!!!運命も!!!!
この私が引きずり下ろして、殺してやる……ッ!!!
脳内だけで響く絶叫。
私が今まで築き上げてきたプライドも、地位も、すべてがここで終わる。
許さない。絶対に許さない
神を殺す、唯一の人間として歴史に刻まれるがいいわ……!!
────ぱぁん!!
脳天をぶち抜かれる
脳が爆ぜ、視界が真っ白に塗りつぶされる。
痛い、という感覚すら一瞬で消え去った。
視覚が死に、聴覚が途絶え、最後には太宰への憎悪さえも溶けていく。
私の命は、その銃声一発で、あっけなく───────
私は、死んだ












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!