雨の音は、思考を鈍らせるから嫌いだ。
けれど、この時ばかりは、目の前で無様に喉を鳴らす女の声を消してくれて助かった。
僕の右手に伝わる、喉の震え
必死に僕の腕を掻きむしる指先。
血が出るのも構わず、必死に「生」にしがみつく
ああ、本当に。
本心だった
見開かれた瞳、救いを求めるように泳ぐ視線。
森さんに阿り、命じられるがままに泥を被る、志も矜持もない矮小な掃除屋
そんな、ちっぽけな存在に織田作が殺されたという事実が、僕の内側を焼き焦がしていた
やがて彼女の瞳に、殺意が宿る
必死に牙を剥いて見せている。
僕を殺してやる、という考えが手に取るように分かった
……だが、そんなものは見飽きている。
僕に殺意を向ける人間など、掃いて捨てるほどいた。
(……あぁ、本当に。何もかもが不快だ)
死の間際になってようやく見せたその殺意も、
僕の神経をただ逆なでするだけの、安っぽい悪あがきに過ぎない
恐怖が消せてないんだよ、屑
この女は、死ぬ瞬間まで、どこまでも醜く、価値のない存在だった。
銃口を、女の額へ向けた
外しはしない
脳天を一発でぶち抜く
────────ぱぁん!!
乾いた音が響き、彼女の身体が弛緩していく
泥水の中に広がっていく赤色は、雨に洗われてすぐに薄まっていく。
思わず独り言が漏れる
一発で終わらせるなんて、優しすぎた。
もっと時間をかけて、もっと惨めに、僕に許しを請うまで痛めつけておけばよかった。
その方が、僕のこの苛立ちも少しは晴れたかもしれないのに。
僕は一度も振り返ることなく、その場を後にした。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。