第2話

太宰side
37
2026/02/16 15:15 更新









雨の音は、思考を鈍らせるから嫌いだ。



けれど、この時ばかりは、目の前で無様に喉を鳴らす女の声を消してくれて助かった。



僕の右手に伝わる、喉の震え



必死に僕の腕を掻きむしる指先。



血が出るのも構わず、必死に「生」にしがみつく



ああ、本当に。








太宰治
……酷い顔だね。ぁあ、気持ち悪い






本心だった



見開かれた瞳、救いを求めるように泳ぐ視線。



森さんにおもねり、命じられるがままに泥を被る、志も矜持もない矮小な掃除屋



そんな、ちっぽけな存在に織田作が殺されたという事実が、僕の内側を焼き焦がしていた



やがて彼女の瞳に、殺意が宿る



必死に牙を剥いて見せている。



僕を殺してやる、という考えが手に取るように分かった



……だが、そんなものは見飽きている。



僕に殺意を向ける人間など、掃いて捨てるほどいた。








(……あぁ、本当に。何もかもが不快だ)







死の間際になってようやく見せたその殺意も、



僕の神経をただ逆なでするだけの、安っぽい悪あがきに過ぎない



恐怖が消せてないんだよ、屑



この女は、死ぬ瞬間まで、どこまでも醜く、価値のない存在だった。









太宰治
(この女如きに、織田作は…)






太宰治
さようなら








銃口を、女の額へ向けた



外しはしない



脳天を一発でぶち抜く









────────ぱぁん!!










乾いた音が響き、彼女の身体が弛緩していく



泥水の中に広がっていく赤色は、雨に洗われてすぐに薄まっていく。












太宰治
…もう少し痛めつけておけばよかったな


太宰治
……ふふ、僕もまだ子供だ。頭に血が上ってしまった











思わず独り言が漏れる



一発で終わらせるなんて、優しすぎた。



もっと時間をかけて、もっと惨めに、僕に許しを請うまで痛めつけておけばよかった。



その方が、僕のこの苛立ちも少しは晴れたかもしれないのに。











太宰治
あぁ……本当に、最悪だ













僕は一度も振り返ることなく、その場を後にした。









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