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第1話

ポアロにいたのは
2,296
2019/08/19 07:01
カラン__


喫茶店[ポアロ]の扉を開く、店内は前のように賑やかでいて何年ぶりの来店に酷く懐かしさを覚えた


「いらっしゃいませ〜」

元気な顔を向けて迎え入れてくれる店員の梓さんは今日も元気みたいだ
入店してきたのが私だと分かるとパァァと顔を明るくして駆け寄った


「お久しぶりですね」

「久しぶりですね梓さん」

カウンター席に案内され、席に座ると渡されたメニュー表を見て注文をお願いする

いつもと同じですね。と笑う梓さんは私の好きなこの料理のことを覚えていてくれたのか、そう思うと少し嬉しくなった


「諸伏さんは仕事どうですか?」

「まあ、順調ですよ」

「あっ!そうだこないだ……」

梓さんは最近の店の様子やお客さんがどうとか、上の階に住んでいる毛利先生のことなど沢山話をしてくれた

梓さんの行動がいちいち面白いので私はクスクスと笑うとムッとした表情へと変わった

「諸伏さん〜?ちゃんと聞いてくれてます?」

「もちろん聞いてますよ、梓さんが面白いから」

笑っちゃってと続けて言うと梓さんはムスッとした顔をして冗談やめてくださいよ!と怒られてしまった。冗談じゃないんだけどなあと答えるも拗ねている梓さんには聞こえていないらしい

「ごめんね?」

「分かればいいんですよ、分かれば」

流石にこれはからかい過ぎてしまったと反省して謝罪を口にすると、満足したのか今持ってきますねと言ってキッチンに戻って行った

これは前までのルーティーンみたいなもので、私は梓と他愛ない話をしてたまにからかいからかわれるという。ただの店員と客ではない、どちらかと言えば友人みたいな関係になっていたのだ

そんなことをふと思っていると、私が注文したパスタを持った梓さんがやってきた

「お待たせしました、いつものやつです!」

そう言ってパスタをもってきてくれる梓さんに少し癒されながら、ありがとうと礼を言う

「何考えてたんですか〜?」

「いや?梓さんは癒されるなあ〜と思って」

騙されないですからね!と口にするのに反して顔はニヤついている、照れてるのが丸分かりだ

そして、キッチンに戻ろうとした梓さんが何かを思い出したようにして梓さんがくるりと一転して戻ってきた

何のことだろうか…?そう思って不思議に思っていると、梓さんは閃いた顔をしているのだが何を考えているのかが分からなすぎてハテナしか思い浮かばなかった

「そういえば、聞いてくださいよ諸伏さん。実は最近なんですけど新しいアルバイトが仲間入りですよ〜」

嬉しそうに、でもどこか遠い目をしてアルバイトの話をする梓さんに私はますます嫌な予感を覚えた。

「仲間入りって…梓さんはやっぱり面白いですね」

彼女が微笑ましく見えるまでは私はまだ大丈夫なのだろうか、そう思えてくるが気が遠くなりそうな話だな
その後も梓さんと"噂のアルバイター"について話を進めていると、カランカランと入店を合図する音が聞こえてきた



入ってきたのは見たことが無い、けれどどこかで見たことのあるような面影をした小学生の男の子が入ってきた


「あっ、コナンくんいらっしゃい」

「梓さんこんにちはー」

梓さんと仲良さそうに話すところからしてこの少年はよくポアロに来ているのだろう。私の隣にちょこんと座る、うん可愛いな

梓さんに注文する少年の自分の身長に合わない椅子と机に少し悶えていると

「初めまして、お姉さんはここによく来るの?」

声 を か け ら れ て し ま っ た

「初めまして、前はよくここに来て梓さんのパスタを食べていたの君は常連さんかな?」

そうだよ!とにこやかに答えてくれる少年に梓さんと同じ癒し枠だなあと思っていた。だが、アイスコーヒーを飲んでいた少年に驚きを隠せなかった

最近の子供はコーヒーも飲めるような子供なんだなと少し感心して発言した

「君、凄いね。コーヒー飲めるんだ?」

「あっ、うん!」

しかし、少し慌てている様子からしてさては大人ぶりたい年頃か?と思ってしまい顔のニヤつきを抑えることが出来なかった

ふふふと笑いながらも照れまくっている少年を見る、けれども少年はそれが不満げな様子らしい

「というか、何の話してたの?」

なんの話…とは恐らく、梓さんと私が話していた新しく入ってきたアルバイターのことだろうか

流れを変えるようにして問いかける少年の質問に私が答えようとしたのだが、梓さんが遮ってしまうように答えた

「新しく入ってくるアルバイトさんの話だよ」

「あれ、お姉さん知らなかったの?」

「今日来たばかりだからね」

と答えるけれど、ふーんと興味なさげな反応に私は少し落ち込んでしまった。聞いてくれたならもうちょっとよさげな返事をしてくれてもいいのに…

そう思っている私だが、相手は小学生だということが頭からすっかり無くなっていた

「それで、その仲間入りした方は女の人なんですか?」

「それが実はですね〜、あっ、安室さん!」

梓さんが、続けて話そうとしたところで後ろの裏口から誰かが入ってくる合図が聞こえた

裏口の方から入ってきた安室さんという人が新しいバイトの人なのだろう、声からして男の人だと思い彼の方を見る






「……っ?」

……あれは

「…どうされました?」

金髪に褐色の肌をした男が梓さんと同じ店員だということを表すエプロンを着て裏口から入ってきた

その姿は私が…兄がよく話してくれていた男の姿だった。知っている、けれど分からないことが多すぎて声を出すことが出来なかった

彼が私のよく知る男であっているのならば、彼がここに居ることに違和感があるのだ。兄と一緒に警察官になると目を輝かせて言っていた彼

" 降谷零 " に彼はよく似ていた

「……」

「どうしたの?お姉さん、安室さんと知り合い?」

隣に座っていた少年が私の先程までとは違う反応と態度に心配して声をかけてくれてはっと、気を取り戻す

「えっ、あっ、いや…知り合いというか、お兄ちゃんの親友に顔が似てたの」

「その親友さんもイケメンなんですね!」

凄いなあ…と声を漏らす梓さんだが、一方で隣の少年は私と安室さんに何かあるのではと疑いの眼差しを向けてきた。

頭の中は沢山の情報が入りすぎて頭がパンクしそうなレベルだった

「へえー…そんなにも僕とその親友さんは似てるんですね、あっ、失礼しました。僕は安室透と言います」

よろしくお願いしますね?という彼に私は何も言うことが出来なくてよろしくお願いしますとオウム返しのように挨拶を返した

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