センボンザクラ
ヨルニマギレ
キミノコエモ
トドカナイヨ
この丘で、貴方をずっとまっているよ。
男主:戸瀬倭(とせ やまと)
ずっと、待っている___
ある日の試合終わり、山田哲人と坂本勇人は久しぶりに飲みに行こうと、球場の入り口で待ち合わせをした。予定よりも早く集まった2人だったが、特に用事もないと、早速飲みにいくことにした。
車に向かって歩き始め、少しした頃。
突然坂本が言った。
車に乗り込み、荷物も下ろしていざ出発というとき。
バンッ!!
車の後ろから大きな音がした。
一旦車を降り、ドクドクと脈打つ心臓の音を無視し、車の後方に回ると、トランク取手近くに手形があるのが見つかった。
予定よりも早かった、とは言えど、彼らが球場を出たのは10時ごろ。
飲み屋も開いている場所は限られてくる時間帯だ。
それに、出待ちするファンも今日は珍しく居なかった。何より、暗闇とはいえど彼らの車に近づいて、手形を残し、早々に去って行くのは難しいだろう。
加え、車に残った手形は小さな子供としか思えないサイズ。彼ら野球選手の手、、、いや、一般的な成人男性と比べても小さすぎた。
苦笑いをして運転席に戻ろうとしたその時。
バンッ!バンバンッ!!
今度は運転席側から音が鳴った。
急いで駆け寄ったが、誰も居ない、そして今回は手形が多かった。
まだ球場に人がいたからよかっただろう。
彼らには『戻る』という選択肢があった。
荷物を車に積んだまま、球場に戻った彼らは、残っていた選手達に駐車場での事を話した。
ロッカールームに居た選手達は口を揃えて『嘘だ』と言ったが、余程の必死さだと思ったのか、それとも先輩だったからか、一度車を見ることにした。
同タイミングで出てきた本来敵対するはずの彼らは、駐車場に置かれた一台の車を見て戦慄した。
驚くのも無理はないだろう。
なぜなら、、、。
夥しい数の手形が、車に残されていたからだ。
一つや二つでは無い。
無数につけられた手形は、クッキリとその輪郭を残し、車に付いていた。
人がいる気配など一つもなく、静けさと寒さが残るだけの駐車場で、一体誰がこんな手形をつけられるだろうか。いや、つけられるはずがない。
真っ青な顔ををして、車の所有者である山田が頼んだ。村上は黙って頷くしか無かった。
青い顔をして帰ってきた彼らを見た選手達は、“ソレ”が実際にあったのだと察した。
見に行った彼ら以上に、状況を知る者はロッカールームには居ない。
それが明確な事実であったからであろう。
血色が戻らないままに、帰り支度を再開させた彼らを見て、選手達は彼らを落ち着かせようとした。
気が利くまとめ役のおかげで安心したのか、少し落ち着きを取り戻した。
無事に帰り支度を済ませた彼らは、全員で球場を出ることにし、ジャイアンツの面々とも話を付けて同時に球場を出た。
其々の球団で「送って行く」と言った選手が居たのか、反対方向に車がある者だけ歩みを進めて行った。
そんな会話をするほどには、悍ましい光景だったのだろう、一瞬で唇の色が消えた。
車を回して戻ってきた中村の言葉で顔をあげ、車に乗り込んだ山田は、自身の車がある駐車場に顔を向けて、また俯いた。
しかし、送ってくれる人間がいることに安心したのか、直ぐに顔をあげた。
別の選手に送ってもらうのだろう西川は、優しさを含んだ声でそう言った。
山田が短く返事を返したところで、車は発進した。
サクラが咲き乱れる此処は何処だろうか。
「ーーー。ーーーー!」
堕ちておいで。サクラの元に。
『第一章 機械仕掛けの人形』












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。