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第2話

2本目
70
2025/06/21 14:56 更新
戸瀬倭
ん〜?どうしたんだい。
戸瀬倭
え?手形を付けるのはダメなのかって?驚かせ方の問題じゃないだろうに。
戸瀬倭
君は君の思うままに、伝えれば良いんだよ。








戸瀬倭
そう、君の魂は今や僕のモノだ。
存分に暴れておいで。全ては僕の計画の為に、、、。
手形事件から一日経ち、落ち着いた山田は、緊張する体を引き摺りながらも球場にやってきた。
今日は変装をした上で電車に乗ったが、今日あの車を持って帰れるのかと聞かれても曖昧だ。
山田哲人
はぁ、何であんな、、、。
イタズラでも無さそうやしなぁ。
音だけ出したのだとしても、あまりに不自然で、やる意味のない事だ。
まぁ、ファンの行き過ぎた者達はやる意味のない事でも、一生懸命やるものだが。
ロッカールームに入って、仲間と軽く談笑しながら自分のロッカーを開けた。
ガチャッ
山田哲人
っ、、、!
思わず息を呑んだ。
周りにいた選手達もその気配を察したのだろう。
山田の周りに集まってきた。
内山壮真
哲人さん?どうしたんですかって、、、え?
肩越しにロッカーを覗いた内山は、腰を抜かしてしまった。どうやらホラーはダメだったようだ。
山田哲人
なんで、、、入れないやろ、、、!
ロッカーにあったのは、昨日も目にした夥しい数の手形。選手達のイタズラレベルではない。
幾つもの手形がくっきりとその形を成していた。
山田哲人
クッソ、もう分からん、、、!!
歯を食いしばった山田は、脳のキャパを迎えたのか、頭を掻きむしってグラウンドの方へ走り去って行ってしまった。
そんな山田の姿を見て、これは球団に報告すべきだと考えた選手を中心に、山田救出作戦なるものが開始された。
結局、ミーティングの時間に間に合うよう山田を落ち着かせ、昨日手形を見た選手達にも告知し、自分の身の回りに十分気をつけるようにと注意喚起がなされた。
しかし、球団が対応に追われることになるのは、誰の目から見ても明らかなることだった。

さて、これからミーティングが始まろうというとき、広報や球団の職員がグラウンドにやってきて、何やらカメラを回し始めた。
そして、選手達が疑問にするまでもなくミーティングが始まった。
職員
えぇっと、すみません。
ちょっとお知らせしておきたいことがありまして。
ミーティングでの監督の言葉の前に、職員は「選手達に知っておいて欲しい事がある」と前置きしつつ話し始めた。
職員
今日の朝、顔を合わせた方々はご存知かもしれませんが、今日から新たに広報が加わります。自己紹介を。
戸瀬倭
はい。今日からヤクルトスワローズの広報として働かせて頂きます、戸瀬倭です。気軽に倭でもなんでも呼んでください。チームの一員として、皆さんのかっこいい姿を広めていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
若手選手からの拍手が上がる中、ベテランの選手は疑いを持っていた。
なぜ、幽霊騒ぎで一悶着あったところに新たな球団職員が?と。
目の前の、戸瀬と名乗った男は薄っぺらい笑みを浮かべ、その口角は上がっているのがうかがえる。

彼の胡散臭さは、ベテランに含まれる選手達には薄気味悪いものだった。
内山壮真
よろしくお願いしますよ!
俺、内山です!
戸瀬倭
よく知っていますよ。内山壮真選手ですよね?応援してました!
ニッコリと笑って話しかけてきた内山に応じた男は、写真頑張りますからねとにこやかに対応している。
厳しい視線に気づいてか、ベテラン勢を見て男は言った。
戸瀬倭
昔から大ファンだったんです。25才という若輩者ですが、宜しくお願いしますね?
その言葉にもやはり、笑みで応えた。
ミーティングが終わり、全体練習に入ろうとしている時、彼らの視線は、カメラを持って村上のタオルを肩にかけて立つ戸瀬に釘付けだった。
髪をセットし直したのか、左右に分けた髪が隠れ気味だった顔を強調し、ルックスのよさが見えたのだろう。やはり若手が食いついていた。
山田哲人
何でこんなタイミングええねん、、、。
中村悠平
、、、偶然じゃないとしたら。
選手達が騒ぎ立てている理由を、球団は知っている筈だ。そして、その対策に少しは追われている筈。
なのに、今このタイミングで新人を雇うだろうか。
戸瀬倭
あれ?どうしました?
監督がお呼びでしたけれど、、、。
遠目に見ながら話しているこちらに気がついたのか、戸瀬が近づいて来て言った。
山田哲人
お前、何で球団職員になったん。
戸瀬倭
あはは、唐突ですね。
そうだなぁ、強いて言うなら日本の為ですかね。
西川遥輝
日本のため?
戸瀬倭
僕には、終わらない、諦めきれない夢があるんです。其れを達成したい。
青空の下、彼はタオルで額を拭うと、山田達の方へ向かって笑いかけた。
戸瀬倭
とあるヒトを、ずっと、、、。
待っているんですよ。
戸瀬倭
じゃ、僕も仕事がありますので。
カメラを取りにベンチへ行った彼を見送りながら、選手達は顔を顰めていた____
戸瀬倭
さて。怪異達は順調かな、、、。
そろそろ来るからね。
カメラを取りに行くと見せかけて、ベンチ裏まで下がった戸瀬は、廊下を歩きながら鼻歌を歌っていた。
戸瀬倭
先ずは1人。
戸瀬倭
出来ればもう1人ぐらい欲しいところだけど、怪異化も難しいからなぁ。
彼は、自陣ベンチからは真反対、、、つまりアウェー側のベンチに回ってきた。
目的は単純。
戸瀬倭
さて。いってらっしゃい。
頑張って暴れるんだよ。
ポケットから小瓶を取り出して、百足のような蟲を1匹、ベンチへ解き放った。
ベンチ裏からそっと下ろしたその蟲は、そのままベンチの下に潜り込んで見えなくなった。
戸瀬倭
、、、ごめんね。
???「楽しいな笑」
???「あっ!『???』!!そっちは危ないよ!」
???「おいっ!」
???「えっ?う、あぇぁぁぁぁ!!」
戸瀬倭
もう、戻ってこないのに。













あの日見た夏空は、綺麗な透明色だ。
なのに何故、こんなにも、、、濁った思い出しか出てこないのだろうか。

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