ドアを押す
軋むような音がして、視界の色が一気に増える
太陽はまだ出ていない
ドアノブを引こうとする
……引こうとした
外から手が生える
セイが走り出す
迅雷が着いていく
セイが曲がり角を曲がる
それに迅雷が続きく
しばらくして、何もなかったような静寂が戻る
セイが迅雷の視線を辿って返す
2人の顔が朝日に照らされる
疾風がセイに続く
セイ、迅雷疾風は魔法研究機関所属学校高等部に属している。
魔法使いのみが入学できる学校だ。
唯、もともと魔法使いが少ないため、初等部、中学部、高等部の全校生を覚えようとすれば1ヶ月もかからないという人数だが。
全寮制の学校であり、主に赤、青、緑、黄、紫、白6つの寮に分けられる。
赤には炎
青には水
緑には風
黄には土
白には治癒
紫にはどれにも当てはまらないものが。
全ての寮が対立している。
1つの寮を除いて。
幻の黒。
黒は全てを使える全能者が。
それぞれの寮に通っている
1つ付け足すと寮は別だが、食堂や校舎は同じため、よく喧嘩になる。
セイが鍵を回しながらキッチンの奥に消えていく
…こいつやっぱりアホの子だ…
は、別にいいけど…
食堂で話しかけるのやめろって言ったのに…
後で殴ろう
迅雷が大きく息を吸う
察したセイが自分の耳を塞ぐ
迅雷が食堂に響き渡る声で叫ぶ
と、後ろから頭を叩かれる
ここぞとばかりにセイが緋獅に同調する
迅雷が子供のように駄々をこねるのを見て、瑪瑙がため息をつき、セイが呆れたような顔をする
迅雷が走り出し、瑪瑙の叱責が飛ぶ
3人が食堂の列に並ぶ
食堂は体育館1つの大きさがあるが、全校生徒が使用するため、必ず列になる。
列ではよく寮同士の喧嘩が勃発し、その度に生徒会が喧嘩を納めている。
生徒会は黒を除くそれぞれの寮の初等部、中学部、高等部から1人づつ選ばれる代表者計6人と全校生徒の中から選ばれる生徒会長の7人で構成されている。
3人が席に着く
同じテーブルに違う寮生が着くのは珍しい。
そのせいでそれぞれの寮生が自分達を見ていると知っていて、堂々と。
もっとも、うち1人はまず視線に気付いているのかどうかから怪しいが。
迅雷が話しかける。
が、誰に話しかけたのか分からないため、誰も返事をしない。
大雑把にも程がある。
迅雷の問いかけに対し、緋獅が単調に返す。
単調すぎて分からなかったのか、迅雷が少しむくれて問いを重ねる。
当たり前だ。さすがにあれでは分からない。
やはり緋獅が単調に返す
何故それで通じる
と言うか食事中に大声で話すな
汚い
迅雷がサボろうとするのでセイがすかさず突っ込む
迅雷が言葉に詰まると緋獅が手を差しのべる
迅雷の成績の悪さを分かっていない。
緋獅が何か言っているが、食べ終わったので関係ない。
さっさと寮に帰ろう。
それが一番平和的だ。
決して迅雷の成績が口に出来ないほど悪いわけではない。
決して。
迅雷の挨拶が聞こえたので、肩越しに手を振る。
目立ちたくないのだ。
迅雷のような
変なやつに絡まれる。
寮のベッドに入り、目をつむる。
誰の気配もない。
静かな夜だ。
静かすぎて眠れない
うっすらとした月明かりを頼りに屋上の階段を上る
少し肌寒い気もするが、大丈夫だろう。
星は見える。
誰も居ない。
月を探す。
見つからない
今日は、新月だろうか
明日は、見えるだろうか。
月の出ていない、静かな夜だ。
小さく息を吐き、目を閉じる。
よくある、唯の1日だった


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!