穏やかだ
木漏れ日が揺れ、鳥が鳴く
川のせせらぎに耳を澄ませ、風が頬を撫でる
前にいた少女が後ろを歩く"コウ"と呼ばれた少年の腕を引く
少女は少女と呼ばれる年齢だが、どこか大人びていて、相手にそう感じさせない雰囲気を持つ。
少年は少年と呼ぶほど幼くは無いが、しかし青年といえるほど落ち着いた雰囲気を持っていなかった。
そんな、不思議な雰囲気を持つ二人が、遊んでいる
穏やかだった
…あの時までは。
色が変わる
視界が染まる
木の葉の緑が消える
鳥の青が崩れる
赤と黒に転がり落ちる
音が消える
ノイズが走る
川の音が歪む
風が勢いを増す
悲鳴が耳の奥をつく
全てが変わった
手が動かない
少女が歩き出す
目的地を始めから知っているかのような足取りで
声が震える
少女が"それ"の近くに歩み寄る
自分が何をすべきか始めから分かっているかのような、緩慢な動きで
視界から赤以外の色が立ち去る
少女が"それ"を抱き上げる
ゆくっりと温もりが消えていく
コウが、腕の中から少女に手を伸ばす
コウが、少女の輪郭をなぞる
コウが、少女の頬に手を添える
コウが微笑む
コウの瞳が揺れる
コウの腕が緩やかに落ちる
コウの瞼がゆっくりおちる
いつの間にか振り出した雨の中、××××は揺れる瞳で笑みを作った
無理やり口角を上げただけの、いびつな笑みを
体を起こす
ひどく、昔の夢を見た
この日にもらった祝福を身に着けていれば、あいつにまた、会えるだろうか
俺には来世なんてもの、無いと分かっていて言った言葉が『また、来世で』。
俺が生きている間に、会えるだろうか
まあ、会えるか。
________俺は、『死』に一番近くて、最も遠い存在だから。
会えたら、また、あいつの隣で笑いたい
…は、我が儘か
あいつが、笑ってれば、それでいい
今度は、ちゃんと、笑って、幸せでいて欲しい
なあ、そう願うことぐらい、許されるだろ?













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。