第5話

⿻ Chapter 4
242
2026/03/16 09:00 更新



あなたのローマ字(家入硝子→Shoko) side
 ぼんやりと意識が浮上する。真っ暗…というか、目を閉じたままなのか。全身が痛くて怠い。目を開けるのすら億劫だ。
 そして、消毒液と煙草が混ざったような匂いと、だれかの話し声が聞こえる。

___だ___と_う。
ありが___い__す。

 伊地知さんと…誰だろう。女の人…?
 ゆるゆるとまぶたを持ち上げると、一瞬目の前が真っ白に光る。

あなた
ま、ぶし…。
伊地知 潔高
あ、あなたの名字さん…。おはようございます。

 伊地知さんの顔が映る。白く光ったのは照明かなにかだろう。

あなた
ぉはよ、ざいます…。あの、わたし…。
あ、まだ安静にね。致命傷になりかねない怪我は治したけど、念の為。

 未だふわふわする意識に、知らない女性の声が響く。
 だれだ…?というか、けが…ちめいしょう…。

あなた
あ。にんむ…。

 そこで、自分がここで眠りこけるまでの経緯を思い出した。

伊地知 潔高
任務なら、呪霊は祓えていたので大丈夫ですよ。
あなた
よかったぁ…。

 伊地知さんの言葉に酷く安心する。初任務から失敗していたら、五条さんたちに合わせる顔がない。
 段々とぼやけていた意識がはっきりとした形を取り戻し、寝台の上で上半身だけをゆっくりと持ち上げる。
 目の前にいたのは、伊地知さんと、もう一人。煙草を吸った、肩に着くくらいの綺麗な茶髪で、左目に泣きぼくろのある女性。

起きれそう?頭ぐらぐらするとかある?

 ハスキーっぽい声がのんびりと響く。

あなた
は、い…。ありがとうございます、えっと…。

 名前を知りたくて目線をあげると、髪色と同じく綺麗な 榛摺はりずり色の瞳と目が合った。

家入 硝子
ぁ、家入硝子。適当に呼んでくれていいから。
あなた
じゃあ、しょうこさん…。

 教えてもらった名前を反芻した途端、胸のあたりがぎゅっと熱くなった。なんでだろう、目の前にいる硝子さんがきらきらと輝いてみえて仕方ない。

家入 硝子
えっとね、戌養は任務のときに呪霊の攻撃をがっつり喰らってたから、ちょっと命が危なかったんだけど、

 こちらが貴女に目を奪われているとも知らず、ゆったりとした喋り方で説明を続ける硝子さん。
 内容なんてほとんど入ってきてない。死にかけていたことと、硝子さんが助けてくれたことだけは理解できたが。

家入 硝子
んで、まあ多分大丈夫だと思うけど、念の為ちょっと安静にしててねってこと。おっけー?

 煙草を口に咥えたまま、小首を傾げて上目がちに理解の是非を問われる。
 なにそれ、かわいい、え、どうしよう。

あなた
すき、です…。

 まったく正常ではない思考回路のまま、つい口から零れたのはそんな言葉だった。
 そして、硝子さんの名前を呼んだときの胸の高鳴りの意味が、わかった気がした。

伊地知 潔高
え゙ぇっ?!
家入 硝子
おー…笑

 伊地知さんの動揺した声と、硝子さんのまじか…みたいな笑い声が室内に混ざって響く。

家入 硝子
んー…とりあえずありがと。けど、一旦は自分の身体心配したげて。ね?

 硝子さんは寝台に数歩近づき、私と目線を合わせるようにしゃがみ、いたずらっぽく微笑む。

あなた
は、はぃ…♡

 完全に硝子さんの虜となっていた私は、腑抜けた返事しか出来なかった。
 これが、私と硝子さんとの出会い。そして、私の初恋の始まりでもある。



To be continued ...

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