葉も鮮やかに色付いて来た今日この頃。
道にはアスファルトの隙間から雑草と共にコスモスも
顔を出していた。
穏やかな気候の中、私は叫ぶ。
「幽霊になったぞ!」
よく覚えてないが、私は死んでしまったようだ。
ふわふわと浮く軽い体、半透明の足、降ろされた黒い髪、
飾り気のない純白のノースリーブワンピースを揺らして。
もう私は苦しむこともないのだろう。うざったい上司も、
口うるさい同僚も、私の進路を邪魔する家族ももういない。
あぁ、そうだ。自分の葬式に出てみよう。
貴方の顔を一目見たい所だ!
歩く必要がないので、私は風のように空を舞った。
棺の周りには親戚や家族、友人が集まっている。
皆俯いていて顔が見えない。
警戒しながらゆっくり近づいても反応がない。
きっと私の姿は見えないのだろう。
色とりどりの献花と真っ黒な喪服はぞろぞろと動く。
額縁にいる私は笑顔でありながら、棺の中には私が安らかな表情で眠っている。
なんとも滑稽な姿だ。これから燃やされるのにも関わらず、このような表情をするのなんて。
自嘲気味に壊れた体を見下す。堕ちた私の壊れた体。
それを燃やすなんて燃料が勿体ない。
くるりと振り返ると、貴方がいた。
俯いていてどのような表情をしているか分からない。
「その可愛い顔を見せておくれよ~。ねぇ」
顔を綻ばせ、貴方の顔を覗き込む。貴女の顔を見て私は
息を呑んだ。
「うぅ……う……ごめん……」
貴方は泣いていた。唇を噛み、必死に涙を堪えていた。
こんな表情、初めて見た。
私の為に、私の為だけに泣いてくれているのだ。
堕ちてしまった私なのに。
「ごめん……なさい……。笑顔で……見送るって……決めたのに…………」
ただ棺に顔を向けて大粒の涙を零す。
袖で何度も顔を擦るが溢れ続ける貴方の涙は止まらない。
それでも拭い続けた。
流れ続ける涙でぐちゃぐちゃの顔を歪めて。
どうして貴方はそんなに優しいの?
どうして貴方は私なんかの為に泣いているの?
ただただ、疑問ばかり浮かぶだけだ。
私は貴方と居たい。そう強く願った。
しかし、もう叶わない願いだ。
ならせめて最後に一言だけ。
「ごめんねぇ、死んじゃって……」
辛気臭い雰囲気なんて貴方似合わないから笑ってよ。
貴方を優しく抱き締めて、呟く。
私の頬に一筋の涙が伝う。
きっとこの言葉は貴方に伝わらない。それでも、私の自己満足でも、言わせて?
ずっと見守ってるよ。
例え死神に攫われても、天使の輪っかがついても、
私は貴女を見守ってる。
「さようなら、私の最愛の人。……そして、ありがとう」
またね。
単語
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アンケート
二次創作と一次創作どっちが好き?
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一次創作やろ
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小説は…………あんまり好きじゃない
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うどんの小説だとどっちも嫌い
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アンケート
夢主ちゃん出る奴書いて欲しい?
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書くな!拒否権は無い!
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どっちでも良い!異論は認める!
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出る奴も出ない奴も見たい!異論はとかは食べた!
67%
投票数: 3票
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。