第2話

戦後の白い鳩
12
2024/01/08 06:03
 真っ白な鳩が空に飛んでいた。雪の様に真っ白で美しい羽をはためかせ、薄暗い曇天の空を背にし、ゆっくりと飛んでいた。ほんのり淋しさと悲しみを帯びた瞳で辺りを見回す。
 美しい見た目をした鳩とは裏腹に、まわりは美しいと言える現状では無い。死体、瓦礫の山や崩れて原型を留めていない建物、火事が起きている所だってあり、戦後の世界は悲惨だ。
 鳩は自分は無力なのだと、自分には何も出来ないのだと改めて痛感した。只々人々を哀れんで、遠くから眺める事しか出来なかった。自分程度にも何か出来ないかと、鳩は何時間も、何日も飛び回った。鳩の目に映るのはやはり悲惨な惨状だけ。こんな惨状に泣き叫ぶ者、致命傷の傷を負い動けずにいる者、などと。鳩は酷く悲しんだ。しかし何も出来ない。鳩は歯痒い思いで毎日毎日飛び回った。

 ある日も、鳩はいつも通り飛び回っていた。すると鳩の瞳にひとりの少女が視界に映る。彼女は嗚咽を零しながらぽろぽろと涙を流し、宛先も無くふらふら歩いていた。時折、
「お母さん………どこにいるの……?」
と呟く。
 彼女を助けたいと心の底から思った。
鳩は彼女の近くに飛んでいき、彼女の前に止まる。
「ハトさん………?」
少女は鳩を見つけると、しゃがみ込んでまじまじと見つめた。キレイな羽ね、と呟きながら目を輝かせる。彼女の顔を見て鳩も嬉しくなった。しかしすぐにお母さん……と呟いて顔を歪める少女。鳩は胸が締め付けられた様に痛む。
 鳩はふと思い出した。人間が沢山集まっている建物を道中で見つけた事を。そのになら彼女の母親も居るかもしれないと鳩は思った。
 早速、鳩は羽を広げて近くの木の枝に止まる。そして少女を見つめる。それを何度も繰り返すと、付いてきて欲しいの?と問われる。それを肯定するように
鳩は羽を広げる。
「……うん、分かった。ハトさんの付いて来て欲しい場所に連れて行って」
鳩は羽ばたく。少女は慌てて鳩を追いかけた。彼女を気遣い、逸る気持ちを抑えゆっくりと美しい羽をはためかせた。
 暫くの間飛んでいると、建物が見えて来た。少々薄汚れており、所々欠けているが、人の気配を感じられる。
「お母さんが言ってた避難所……?ハトさん、私をここに連れて行きたかったの?」
鳩は答えない。反応を返す事も無い。それでも少女は顔に笑みを浮かべ、ありがとうと鳩にお礼を伝え、建物の中に消えていった。彼女の背中を惜しむ様に、居なくなっても建物をずっと眺めた。
 鳩は胸が暖かくなるのを感じた。嬉しさと、なんとも言えない気持ちがぐちゃぐちゃに入り混じった様な感情が込み上げてきた。
 それから鳩は、困っている人を見かけると、その小さな体を活かして助けていた。瓦礫に人が埋まっていたら、そこに人を呼び、道に迷った人に道案内をしたりと、休まず懸命に人助けをした。
 人々に感謝され、何日も何ヶ月も続けた。その結果、鳩は力尽きて死んでしまった。しかし懸命に人助けをした鳩に人々が感動し、鳩は「平和の象徴」として語り継がれて行った……。

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うどん
うどん
久しぶりの更新がこれでごめんよ
うどん
うどん
キミガシネと東方の奴更新出来る様に頑張るわ
うどん
うどん
て訳でばいばーい

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